CrSJ 2019 - 令和元年度日本結晶学会年会および会員総会CrSJ 2019 - 令和元年度日本結晶学会年会および会員総会

シンポジウム

本年度の年会に於きまして、以下の三つのシンポジウムを企画致しました。
皆様ご参集くださいますよう宜しくお願い致します。

  • 日時:11月20日(水)
  • 時間:9:00 - 11:45

物理・鉱物系シンポジウム
「PDF解析を用いた結晶の局所構造解析の現状とその新展開」(A会場)

オーガナイザー 河口彰吾(高輝度光科学研究センター), 水牧仁一朗(高輝度光科学研究センター), 横田紘子(千葉大学)、森茂生(大阪府立大学)

近年、Pair Distribution Function (PDF) 解析への関心が高まっている。これは、高機能性材料の特性が中距離相関構造に依存していることがひとつの要因である。例えば、平均構造の解析から僅かに乱れた中距離相関解析基にした誘電体や負の熱膨張物質への物性研究への応用, 通常の平均構造の解析では解けない未知構造解析への展開、中性子を用いた中距離磁気構造への展開について報告されており、今後、 さまざまな研究分野での展開が期待される。本シンポジウムでは、結晶という並進対称性を保持した周期構造が基本的な舞台ではあるが、中距離相関の理解による結晶学へのアプローチが物性や機能の理解に重要な役割を果たしている物質群について、多くの学会員が興味あるX線・中性子・電子線PDF解析を用いた構造解析や物性研究事例に焦点を当てる。

講演タイトルおよび講演者(敬称略)(予定)
  • 「X線全散乱測定とPDF解析」冨中 悟史(物質・材料研究機構)
  • 「負の熱膨張物質 Pb、Bi perovskite化合物のPDF」綿貫 徹(量子科学技術研究開発機構)
  • 「放射光高エネルギーX線を用いた誘電体のPDF解析」米田 安宏(日本原子力研究開発機構)
  • 「中性子線を用いた結晶PDF解析」樹神 克明(日本原子力研究開発機構)
  • 「ナノビーム電子回折法による金属ガラスの局所構造解析」平田 秋彦(早稲田大学)

化学系シンポジウム
「金属元素が織り成す分子から三次元ネットワークの結晶構造と高機能性材料への展開」(B会場)

オーガナイザー 菊川雄司(金沢大学),大橋 賢二(日本大学)

構造を描写することができる結晶学的手法は、化学の広範な研究領域において、最も広く用いられる構造決定手法のひとつである。複雑化する構造とその機能を直感的に理解することができるため、結晶構造解析を求められる機会は、ますます増えている。金属元素は既定された大きさ・方向をもち、フレキシブルな分子の動きを固定する役割や、分子同士を結合させ三次元ネットワークを構築することが可能である。また、金属元素と酸素で形成される金属酸化物は、規則的な連続構造だけでなく、分子性のクラスター構造を構築することが可能である。本シンポジウムでは、金属錯体分子、配位高分子、金属酸化物クラスター、金属酸化物の有機・無機化学における構造化学の実際と、磁性、光化学、触媒などの機能性材料への応用について議論していただく。なお、本シンポジウムは、日本学術振興会研究拠点形成事業「先進エネルギー材料を指向したポリオキソメタレート科学国際研究拠点」との連携開催である。

講演タイトルおよび講演者(敬称略)(予定)
  • 「らせん型四核錯体の結晶化と溶解に伴う動的なヘリシティー変換」秋根 茂久(金沢大学)
  • 「酸素分子の電子スピンを見分ける多孔性配位高分子磁石」高坂 亘(東北大学)
  • 「金属酸化物ナノクラスターの精密設計とその機能」鈴木 康介(東京大学)
  • 「結晶性Mo3VOxへの骨格金属置換および異金属導入に立脚した選択酸化活性制御」石川 理史(神奈川大学)
  • 「Low resolution powder diffraction data and structure analysis: Where are the limits?"」Hermann Gies(東京工業大学)

生物系シンポジウム
「生命科学の飛躍のために一層深まる蛋白質結晶学の役割」(C会場)

オーガナイザー 和田啓(宮崎大学)・宮原郁子(大阪市立大学)

タンパク質の立体構造は、生命現象の理解や医薬品開発などに重要な指針を与える重要な情報である。現在、教科書に多くのタンパク質の立体構造図が掲載されているが、それらのほぼ全てがX線結晶構造解析で決定されたものである。分子量によらず原子分解能で構造を決定できる唯一の方法であった蛋白質結晶学は、この50年に亘って実績を積み上げてきた。一方で近年、クライオ電子顕微鏡が目覚ましい技術革新を遂げ、その精度も原子分解能に迫る勢いで向上してきている。本シンポジウムでは、生命科学の発展をリードした3名の先生方に、結晶構造解析によって築き上げた研究領域とその周辺の話題に加え、ご自身の研究ポリシーなどについてご講演頂き、今後の蛋白質結晶学の役割について考えてみたい。なお、本シンポジウムは、日本結晶学会誌「ミニ特集:精密構造解析」の生物系分野”スピンオフ”企画である。

講演タイトルおよび講演者(敬称略)(予定)
  • 「光合成・光化学系IIのより確かな構造を求めて」神谷 信夫(大阪市立大学)
  • 「タンパク質結晶学のさらなる可能性 ー 分子構造から電子構造へ ー」三木 邦夫(京都大学)
  • 「チトクロム酸化酵素の構造・機能研究から見た結晶学の役割」月原 富武(兵庫県立大学)