時分割X線回折を用いた高速酸素脱離反応 一見単純に見える反応であっても,その反応機構は自明ではない.しかしながら無機固体における反応中の構造をとらえることは, これまで技術的に容易ではなく,多くの場合見過ごされてきた.しかし,近年の測定技術の発展のおかげで, サブ秒レベルの反応でも放射光を用いたX線回折測定によってその構造変化が精密に追えるようになってきた. 図の左側にはSr3Fe2O7–δにおける水素ガス導入による酸素脱離反応の時分割X線回折データ(100ミリ秒間隔)を示した. その結果,数秒から数十秒で完了する高速な反応の反応経路を明らかにすることができた.右図にはその明らかとなった反応経路を示した. 今後こういった測定手法を活用することによって,無機化合物の反応解析や新物質合成が飛躍的に進歩することを期待している.
図1 CrCoNi 3元系等原子量HEAにおける等温焼鈍での電気抵抗変化.
電気抵抗値は,等温焼鈍前に行った1,473 Kから水焼入れ直後の抵抗値(ρ0)で規格化している.
図1 CrMnFeCoNi合金の(a)各温度における応力-ひずみ曲線,および(b)295 Kと15 Kにおける代表的な中性子回折パターン.