日本結晶学会誌 Vol.64 1号(表紙)

SPring-8 BL26B1 に整備されたプレート回折計 プレート回折法は,タンパク質の結晶化プレートのままX線を照射し回折実験を行う手法である. 凍結法に比べてX線損傷の影響が大きいものの,抗凍結剤への浸透や結晶のピックアップ,凍結作業が不要であるというメリットがある. また,結晶のハンドリングや抗凍結剤浸透の影響を受けないことから,結晶化ロボットを用いた大規模結晶化スクリーニングからの回折能評価に特に有効である. この目的のために,SPring-8ではBL26B1にプレート回折計を整備している.この装置は,実験定盤上に設置されたプレート回折計, プレートを保管するプレートストッカー,プレートストッカーから回折計まで結晶化プレートを搬送する多軸ロボットから構成される. 現在,より小さい結晶からでもデータ収集ができるように,挿入光源ビームラインであるBL45XUへの導入も進んでいる.

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日本結晶学会誌 Vol.64 No.1 P.1
特集「SPring-8」
特集「SPring-8」にあたって
杉本邦久,水牧仁一朗,大和田謙二,熊坂 崇
SPring-8のタンパク質結晶構造解析
山本雅貴,平田邦生,長谷川和也
SPring-8における最近10年の化学分野の研究
橋爪大輔
SPring-8粉末回折のこの10年
久保田佳基,森吉千佳子,西堀英治,河口彰吾
表面X線回折の進展
若林裕助
SPring-8高圧実験ビームラインの概要と最新研究
肥後祐司,河口沙織
SPring-8におけるコヒーレントX線回折イメージングの展開
高山裕貴,中迫雅由
高エネルギーX線を用いた非晶質物質の精密構造解析
小原真司,尾原幸治
オペランドCT-XAFSによる固体高分子形燃料電池の三次元イメージング
唯 美津木,松井公佑,宇留賀朋哉
日本結晶学会誌 Vol.64 No.1 P.65
連載企画 X線結晶学者のためのクライオ電子顕微鏡解析の手引き(7)
クロマチンのクライオ電子顕微鏡構造解析
滝沢由政,胡桃坂仁志
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図1 クロマチン基盤のクライオ電子顕微鏡構造.(Cryo-EM structures of chromatin units. ) (A)ALB1エンハンサーDNA配列を含むヌクレオソームの構造(EMD-6898). (B)ヘテロクロマチンの基盤構造であるHP1-ジヌクレオソーム複合体の構造(EMD-6738). (C)セントロメアクロマチンの基本構造であるH3-CENP-A-H3トリヌクレオソーム(EMD-0768)とH3-H3-H3トリヌクレオソーム(EMD-0770)の構造.
日本結晶学会誌 Vol.64 No.1 P.69
連載企画 X線結晶学者のためのクライオ電子顕微鏡解析の手引き(8)
クライオ電子顕微鏡による二成分毒素の構造解析:トキシン膜透過システムの構造基盤
吉田徹,山田等仁,津下英明
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図6 a,b:Ib膜孔狭窄部(Ca-edge, NSQ-loop, φクランプ), c:φクランプの拡大図.(Narrow clamps of Ib-pore(Ca-edge, NSQ-loop and φ-clamp.))