日本結晶学会誌 Vol.63 3号(表紙)

ミニ特集 新しい「研究」様式 放射光非来所実験の最前線と実践例よりタンパク質のクラスター結晶からの構造決定 近年の国内外の放射光施設では自動測定や遠隔操作での測定などが可能になっており,もはや非来所での実験が標準となりつつある. 加えて自動化の恩恵は,手動での測定では現実的ではないようなデータ収集法による構造決定にまで及んでいる. 写真のようなクラスター状のタンパク質結晶から構造解析可能なデータが得られるなど,以前は考えられないことであった. しかしながら最新の高輝度微小フォーカスビームを用いて,大量の回折データを短時間で取得することのできる自動データ収集システムで冗長にデータを取得し, また自動解析技術によりこれらの大量のデータを臆することなく処理することが可能であることと相まって,最終的に2.5Å分解能での構造決定に至った. ほかにも,針状の微結晶のクラスターを無造作にクライオループで拾い上げただけで,そのたった1 つのループからのデータのみで構造決定に成功するなど, これまでのデータ収集のあり方が変わろうとしている.

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日本結晶学会誌 Vol.63 No.3 P.184
連載企画 X線結晶学者のためのクライオ電子顕微鏡解析の手引き(3)
クライオ電子線トモグラフィー法の実際
柳澤春明,吉川雅英
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図1 電子顕微鏡での連続傾斜像撮影.(Tilt series data acquisition.)
A) 対象物の位置がステージ傾斜軸と一致していないと傾斜時に対象物が視野から外れてしまう. 試料のZ 軸方向の位置を調節することで,傾斜時の対象物の移動を最小にできる. B) Low dose 撮影の設定.撮影位置の照射ダメージを最小化するため,傾斜軸方向に離れた場所で位置トラッキングと焦点合わせを行う.
日本結晶学会誌 Vol.63 No.3 P.189
連載企画 X線結晶学者のためのクライオ電子顕微鏡解析の手引き(4)
電子線三次元結晶構造解析/3D ED/マイクロED
米倉功治
画像2
図5 (a) [P4444]CF3COO水溶液および(b) AN水溶液のq=0におけるX線散乱強度(絶対スケール)(上段) および粒子を区別しない場合の密度ゆらぎ(下段).(I(0) values and density fluctuations in (a) [P4444]CF3COO-water mixtures and (b) acetonitrile-water mixtures as a function of reduced concentration.) 横軸は臨界濃度で規格化した濃度.温度は臨界温度で規格化.