ペロブスカイト型酸化物CaTiO3の(110)双晶境界における結晶対称性の局所変化 CaTiO3はペロブスカイト型構造をもち,室温で中心対称性をもつ空間群Pbnmに属する.単位胞のa,b軸の長さが近いことから(110)双晶境界が頻繁に観察される. (a)はこの双晶境界のTEM像,(b)は双晶を含む領域から撮影された制限視野電子回折図形,(c)は双晶境界構造の模式図である. この双晶境界は中心対称が破れた極性をもつ構造をとり,強誘電性を示すことが報告されていたが,双晶境界における局所的な対称性変化を直接観察した例はなかった. 本研究では,1nm程度のナノ電子プローブを用いる収束電子回折法を適用して,双晶境界直上とその近傍における収束電子回折図形の対称性変化を観察し,双晶境界における極性構造の存在を明らかにした. また,収束電子回折図形の強度分布と多重散乱強度計算との定量的比較から,双晶境界の構造パラメーター精密化を行い,局所領域の電気分極の大きさを見積もった. 収束電子回折法は局所領域の対称性の変化にきわめて敏感であり,今後さまざまな物質の界面・粒界への応用が期待される.