50pm分解能電子顕微鏡で捉えたリチウムイオン 物質中の水素,リチウム,炭素,酸素など軽元素イオンの配置を知りたい観たいという願いが昔からある. いまでは「50pm分解能電子顕微鏡」によってリチウムイオンの観察までができるようになった.収差補正技術の進歩によって, 大きな散乱角(2θ~d/λ)まで電子波の位相が揃えられるようになったからである.さらに“その場観察”電子顕微鏡法を用いれば, リチウムイオン電池の充電・放電サイクルにおいて電極内を移動するリチウムイオンの動的挙動をも捉えられるだろう. スピネル構造をもつ結晶LiX2O4(X=Mn,V)で はリチウムイオンは4面体配位の中心にあって, <110>方向に並んでいる.顕微鏡像(写真は環状暗視野STEM像)は投影像で,像強度は<110>方向に並んだイオン数に比例する. リチウムイオンが移動すれば,コントラストが1つぶん減少する.すなわち,像コントラストが原子ポテンシャルV(r)に比例する位相コントラスト像になっている. 今後,プロトン観察や磁気モーメント観察では,局所回折強度の解析(逆問題の解法)が鍵となろう.