日本結晶学会誌 Vol.62 3号(表紙)

Heガス冷凍機型クライオスタットとワイセンペグカメラによる構造物性研究 構造物性の研究では,極低温,高温,高圧,電場や磁場の印加下における回折実験が重要となる. 写真のクライオスタットは1981年頃に大阪酸素に図面を持ち込んで制作依頼したHeガス冷凍機型のクライオスタットで, X線用としては国産一号機のものである.検出器側は,最初はシンチレーション検出器であったが,一次元位置敏感型検出器(PSPC)にかわり, 写真の装置では1994年頃にマックサイエンス社に制作依頼した湾曲イメージングプレートを用いたワイセンベルグカメラと層線スクリーンとソーラースリットが2θ軸に搭載されている. 物性測定の温度変化で相転移が見つかるとその構造変化が知りたくなる.少し前まではX線回折では実現不可能であったが, 低温でのX線回折実験ができる装置が実現するとさまざまな分野の人が新しい科学の分野と物質を持ち込んでくる(tool-driven revolution). その一例としてここで示しているのは34 Kで電荷秩序相転移するα’-NaV2O5の低温相で出現する超格子反射で,相転移が発見された1996年頃の早い段階で取ったものである. 見えている反射はすべて超格子反射であり,k=1/2が通るように層線スリットを付けて(h 1/2 l)面内のワイセンベルグ写真を撮り逆格子空間に変換している.

日本結晶学会誌 Vol.62 No.3 P.133
多孔性分子結晶の動向と展望 久木一朗
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図2 異なる空孔サイズをもつ同形のHOF 13a13b.(Isostructural HOFs of 13a and 13b with different pore sizes.)
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図3 HATN誘導体14のHOF構造.(Structure of a HOF composed of HATN derivative 14.)
日本結晶学会誌 Vol.62 No.3 P.135
電荷移動と極性-非極性転移が共存する負熱膨張物質 酒井雄樹,西久保 匠,東 正樹
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図2 Bi1-xPbxNiO3の負熱膨張メカニズム. (Negative thermal expansion mechanisms in Bi1-xPbxNiO3.) 0.05 ≤ x ≤ 0.25ではサイト間電荷移動により(上),0.60 ≤ x ≤ 0.80では極性-非極性転移により(下),負の熱膨張が発現する.
日本結晶学会誌 Vol.62 No.3 P.137
SiO2ガラスの高圧下における不均一構造:小角X線散乱を用いたその場観察
佐藤友子
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図1(a) SiO2ガラスの高圧下におけるX線小角散乱・回折パターンと(b)低Q領域の平均強度IavとFSDP位置の圧力変化. ((a) X-ray scattering patterns of SiO2 glass under high pressure, (b) Pressure dependence of Iav and the position of the FSDP.) 10GPa以下ではIavはFSDPの裾の影響を受けているため灰色でプロットしている.
日本結晶学会誌 Vol.62 No.3 P.139
抗付着剤開発に向けた細菌線毛の立体構造解析
河原一樹,沖 大也,中村昇太
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図2 分泌タンパク質CofJとTcpFの比較.(Comparison between a secreted protein CofJ and TcpF.) N末端領域の配列比較においてCofJのマイナーピリンとの結合に必須である芳香族アミノ酸と相当するTcpF中の残基を四角で囲った.