緑色蛍光タンパク質の発色団近傍における価電子分布と水素結合経路 緑色蛍光タンパク質(GFP)はオワンクラゲ(Aequorea victoria)がもつ蛍光タンパク質であり,紫外光~青色光を吸収して緑色光を発する. 一般的にタンパク質の結晶構造解析は1.5~3Åの分解能で行われるため,蛍光特性を決定している発色団と周辺アミノ酸の間の相互作用についての定量的な評価は困難であった. 今回の0.78Å分解能のX線回折データを使用した電荷密度解析では,各原子のまわりの価電子分布が静的変形(static deformation)電子密度図において観測でき, 発色団内や周囲のアミノ酸側鎖との間に形成される従来型(O/N-H…O/N)および非従来型(C-H…O/N)の水素結合についても,結合経路(bond path:BP) として検出することができた(電子密度を表面プロット表示,従来型および非従来型の水素結合に対応するBPをそれぞれ黄色とピンク色の曲線で示している). 今後は,ほかのさまざまなタンパク質についても超高分解能電荷密度解析が適用され,物性や機能に関連する電子分布の特徴が次々と解明されるようになると期待される.