光 電子ホログラフィーの測定法 今までドーパントの立体原子配列の測定は難しいとされていた.光電子ホログラフィーはそれを可能にする.試料に軟X線を照射して(1), 結晶中のドーパントの内殻電子を励起すると,そこから光電子が放出される(2).この光電子は周囲の原子で散乱されて,散乱波を形成する(3). このまま自然に直接波と散乱波が干渉し,光電子の放出角度分布に結晶の対称性を反映した美しい干渉縞が現れる(4). この干渉縞はホログラムの性質をもち,ドーパント周囲の立体構造が記録されている.広い立体角でホログラムを測定して, 再構成計算するとドーパント周囲の立体原子配列が得られる.初期モデルや位相などの情報は原理的には不要だが, 二次元のホログラムデータから三次元原子像を得るにはスパースモデリングを利用した理論が必要である. ドーパントの原子価による内殻準位のエネルギーシフトを利用すると,原子価それぞれの原子配列を得ることができる強力な測定法であり,今後の発展が期待されている.
本特集号「結晶学と情報学の融合」では,データ駆動科学がどのように導入され,適用されているかを最先端の研究からご紹介し,読者の皆様のご研究に適用される契機となっていただきたいと考え企画しました.
(1)スパースモデリングを用いた解析法