グラフェンのSi点欠陥における原子電場の異方性 新たな電子顕微鏡法として,走査透過型電子顕微鏡における微分位相コントラスト法が注目を集めている.試料下の回折面での検出器による微分演算により, 物質中の電場を原子レベルで観察することが可能になりつつある.孤立した単原子は原子核から遮蔽電子雲に向けて等方的な電場が形成されるが, 共有結合を有する原子の電場は非等方性を示すと考えられる.単層グラフェンには(a),(e)の環状暗視野像に示すような3配位(Si-C3)や4配位(Si-C4)の点欠陥が形成される. 同時に取得した微分位相コントラスト法により得られたSi単原子の電場強度を観察すると,局所的な対称性を反映して(b)3回,(f)4回対称なSiの原子電場が形成されており, 隣接するC原子との共有結合に由来した原子電場の非等方性が可視化された.(d),(f)に示すように,第一原理計算により得られた構造に基づく像計算との良い一致を示しており, 原子レベルでの化学結合イメージングの発展が今後期待される.