日本結晶学会誌 Vol.61 4号(表紙)

グラフェンのSi点欠陥における原子電場の異方性 新たな電子顕微鏡法として,走査透過型電子顕微鏡における微分位相コントラスト法が注目を集めている.試料下の回折面での検出器による微分演算により, 物質中の電場を原子レベルで観察することが可能になりつつある.孤立した単原子は原子核から遮蔽電子雲に向けて等方的な電場が形成されるが, 共有結合を有する原子の電場は非等方性を示すと考えられる.単層グラフェンには(a),(e)の環状暗視野像に示すような3配位(Si-C3)や4配位(Si-C4)の点欠陥が形成される. 同時に取得した微分位相コントラスト法により得られたSi単原子の電場強度を観察すると,局所的な対称性を反映して(b)3回,(f)4回対称なSiの原子電場が形成されており, 隣接するC原子との共有結合に由来した原子電場の非等方性が可視化された.(d),(f)に示すように,第一原理計算により得られた構造に基づく像計算との良い一致を示しており, 原子レベルでの化学結合イメージングの発展が今後期待される.

日本結晶学会誌 Vol.61 No.4 P.203
最近の研究動向 伝導性MOFの最近の展開 大津 博義
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図1(a)MOFの模式図およびMOF内の2つの伝導経路である(b)結合を介した経路と(c)空間を介した経路の模式的表現.
日本結晶学会誌 Vol.61 No.4 P.205
最近の研究動向 新規Fe-Mg系酸化物の結晶構造と地球深部科学 石井 貴之
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図1 (Mg0.87(1)Fe2+4.13(1))Fe3+4O11の結晶構造.
日本結晶学会誌 Vol.61 No.4 P.207
最近の研究動向 磁気スキルミオンのヘリシティ・キラリティ相関と磁気バブルのヘリシティダイナミクスの観測 柴田 基洋
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図1(a)B20型結晶構造,(b)らせん磁気構造,(c)スキルミオンの右手系・左手系の模式図.
日本結晶学会誌 Vol.61 No.4 P.209
最近の研究動向 タンパク質結晶学の巨人 Michael G. Rossmann 福山 恵一
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図1 1981年当時の研究室メンバーのグループフォト.後列右から3人目がMichael G. Rossmann,前列中央が秘書のS. Wilder,右端が私.
日本結晶学会誌 Vol.61 No.4 P.211
最近の研究動向 クライオ電子顕微鏡で明らかになったスルメイカヘモシアニン(TpH)の立体構造 松井 崇,加藤 早苗,田中 良和
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図3 TpHの会合体構造.
a)TpHを横,上,下から見た構造.
b)TpHを構成する10分子の会合関係.
c)TpHの内部領域の概略図.各プロトマーは別の色で表示した.