シトクロムc酸化酵素のプロトン能動輸送経路を構成する水チャネルとプロトンプール 膜タンパク質であるシトクロムc酸化酵素(CcO)はO2をH2Oに還元する反応を触媒し,H+を能動輸送する. われわれはCcOの中に経路Hと称する水チャネルと水素結合ネットワークが連結したH+輸送経路およびプロトンプールを見つけた. その水チャネルは順にA,B,C,D,Eの空洞で構成されていて,空洞Aに分子の外からH3O+が取り込まれて順次Eまで移動し, そこからH+がプロトンプールであるMg水クラスターに移動する.このH+輸送はO2が酸素還元中心に存在しない時に起こり, 4H+がプロトンプールに一時的に蓄えられる.O2が酸素還元中心に入って来るとタンパク質の微妙な構造変化によって空洞C,Dが消失して, 水チャネルは閉じられる.それとともにプロトンプールから水素結合ネットワーク介したH+輸送が始まる.
図1 1の分子構造および結晶中で形成される二次元シート構造.(Molecular structure and 2D sheet structure in the crystal of 1.)
図2 (左)二次元シート内におけるCoの磁気スピンの配列の模式図.(右)外部磁場の変化に伴う二次元シート間の磁化の相関の模式図. (Schematic views of (Left) magnetic moments of Co in the 2D sheet and (Right) change of intersheet magnetic moments by applied magnetic field.)