日本結晶学会誌 Vol.61 2号(表紙)

粉末X線回折の電子密度解析とWIEN2kで計算されたアルミニウムの電子密度分布 金属で一般的に仮定される自由電子ガスモデルからのわずかな“ずれ”を可視化するため,全電子密度分布から球対称のAl原子の電子密度を引いた差分を指名している. 図の中心がAlの原子核位置である.球対称からのわずかなずれを示すため,等高線のステップは0.005 e/A3である. どちらも原子核のない領域に0.03~0.045 e/A3の電子密度のピークが明瞭に観測されている.このピークの高さは, シリコンなどの共有結合電子の1/10以下である.弱い電子密度であるが両者の形状には違いがみられる.最終的な解析から, この形状の違いが原子核周りの原子軌道的な電子に起因することが明らかになった.

日本結晶学会誌 Vol.61 No.2 P.73
最近の研究動向 高圧下における化学結合と結晶学 小澤芳樹

シンポジウムからみる最近の高圧結晶化学のトピックス

  1. 小松一生先生(東京大学)「高圧中性子回折実験による氷および水素ハイドレート研究の新展開」
  2. 永江峰幸先生(名古屋大)「高圧結晶構造解析が明らかにする蛋白質内部の水分子の挙動」
  3. 小澤芳樹「ギガパスカル圧力下での金属錯体のフォトルミネッセンスピエゾクロミズム」
  4. 加藤礼三先生(理化学研究所)「単一成分分子性結晶の高圧下電子物性」
  5. 清水克哉先生(大阪大学)「200 Kを超える超伝導体の低温高圧下結晶構造解析」
日本結晶学会誌 Vol.61 No.2 P.75
最近の研究動向 電子チャネリングを用いたサイト選択的分光分析: ケイ線石のAl/Si秩序度の例 伊神洋平,武藤俊介,三宅 亮
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図1 ケイ線石の結晶構造. (Crystal structure of sillimanite.)
日本結晶学会誌 Vol.61 No.2 P.77
最近の研究動向 光第2高調波顕微鏡を用いたドメイン境界における物性評価 横田紘子
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図2 Pb3(PO4)2のSHG三次元画像. (3D image of SHG distribution from Pb3(PO4)2.)
日本結晶学会誌 Vol.61 No.2 P.79
最近の研究動向 Bio-SAXSを用いたタンパク質複合体構造解析の実際 藤間祥子
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図1 (A) SAXS散乱曲線. (Scattering curve.) (B) 結晶構造と溶液構造の比較. (Comparison of Crsytal structure with solution structure.)