ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No3
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日本結晶学会誌Vol62No3
クリスタリットの系の特徴に応じてSupramolecular Organic Framework(SOF),Charge-assisted hydrogen-bonded network,PorousOrganic Salt(POS)など,さまざまである.適切な位置に水素結合基を導入した有機分子を構成分子として用いることによって,永続的多孔性を有し,酸性や塩基性の溶液中でも分解しないHOFが構築できるようになってきた.(大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻久木一朗)多孔性分子結晶Porous Molecular Crystal:PMC一般的には有機分子で構成される内部に自立空間をもつ分子結晶のことを指すが,無機結晶との対比のために有機分子と金属イオンから構成される多孔性結晶に対しても用いられることがある.環状やかご状の分子の内側の空間に由来する空孔をintrinsic pore,分子自体は空孔をもたないが結晶化する際に整列した分子同士の間に生じた空間に由来する空孔をextrinsic poreとそれぞれ呼ばれる.PMCの最大の特徴は,多点的に作用する複数の弱い分子間相互作用によって分子が整列している点である.このため,単純な再結晶の操作で純度の高い多孔性結晶を得ることができるが,一方で分子構造から結晶構造を設計・予測することは容易ではない.しかし近年,サウサンプトン大学のM. Dayとリバプール大学のA.I. Cooperらの共同研究チームによって計算化学,結晶工学,ロボティクスを駆使した画期的なPMCの構築手法が実践され,多くのPMCを効率良く構築することが可能になりつつある.(大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻久木一朗)水素結合性有機フレームワークHydrogen-Bonded Organic Framework:HOF多孔性分子結晶(Porous Molecular Crystal:PMC)の中でも,特に分子間水素結合によって構成分子をネットワーク化して形成される結晶性多孔質構造のことをHOFという.HOFという呼び方は,2011年にテキサス大学オースチン校のB. Chenの研究グループから報告された論文[J. Am. Chem. Soc. 133, 14570(2011)]の中で初めて登場する.Metal-Organic Framework(MOF)やCovalentOrganic Framework(COF)にちなんだ命名であろうか.水素結合によって分子が整列し形成された多孔質結晶は古くから知られており,例えば青山らはアントラセンビスレソルシノールから構築した水素結合ネットワーク構造を,Organic Zeolite Analoguesと呼んだ[J. Am. Chem.Soc. 117, 8341(1995)].水素結合によって構築されている多孔質構造体のその他の呼び方としては,それぞれ極性-非極性転移Polar-Nonpolar Transition陽イオンと負イオンの重心がずれるために生じる電荷の偏りである,電気分極をもつ結晶構造(極性構造)から,電気分極をもたない結晶構造への転移.温めると体積が縮む,負の熱膨張のメカニズムの1つでもあり,代表的な強誘電体であるPbTiO 3では,極性の強誘電相から非極性の常誘電相への転移に伴い,電気分極による構造歪みが解消することで,約1%体積が収縮する.(神奈川県立産業技術総合研究所酒井雄樹)第2高調波発生Second Harmonic Generation極性の結晶構造をもつ物質にある波長の光を入射すると,半分の波長の光が放出される非線形光学現象である.P-E履歴曲線による強誘電性の観測手法と並び,極性の有無を評価する非常に有益な手段として広く利用されている.(神奈川県立産業技術総合研究所酒井雄樹)Debye-BeucheモデルDebye-Beuche Model二相混合状態を表す自己相関関数のモデルの1つ.相関長をξとしたとき,電子密度分布の揺らぎの二乗平均で規格化された自己相関関数がρ0(r)=exp(-r/ξ)となると仮定したもの.小角散乱プロファイルの解析において,散乱体が明確な形状をもつ場合にはGuinier近似により散乱体の大きさや形状の情報が得られるが,二相混合・分離状態のように明確な形状をもたない場合にはDebye-Beucheモデルを用いるべきである.また,臨界状態の密度揺らぎを考える場合にはOrnstein-Zernike式が適するとされる.モデルはDebye and Beuche: J. Appl.Phys. 20, 518(1949)で提案されたが,導出はDebye, et al.:J. Appl. Phys. 28, 679(1957)に詳しい.(広島大学大学院先進理工系科学研究科佐藤友子)ガラスの永久高密度化現象Permanent Densification of Glassガラスに圧力を印可後,常圧に回収すると,不可逆的202日本結晶学会誌第62巻第3号(2020)