ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No3
- ページ
- 28/92
このページは 日本結晶学会誌Vol62No3 の電子ブックに掲載されている28ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 日本結晶学会誌Vol62No3 の電子ブックに掲載されている28ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
日本結晶学会誌Vol62No3
松畑洋文,関口隆史底面転位ループの構造をしている.図4bはα/Bまたは_γ/A面間のb=1/3[1120]の基底面転位ループの構造を示している.図1aを見るとT1,T2,の2つの四面体は同じ_向きに配置されているが,T1’,T3’はT1,T2,を(1100)面について鏡映反転したのち,c軸に沿ってc軸長の1/2だけ並進したように配置している.このc-glideにより,四面体の配置やSiコア部分転位とCコア部分転位の位置の反転を引き起こしている.ここでは,α/Cまたはβ/A面間の転位ループをType A,α/Bまたはγ/A面間の基底面転位ループをType Bと記述しておく.図4cの転位ループは,図4aの基底面転位ループと同じ基底面上に乗って_ _いて,TypeAであり,b=1/3[1120]であることがわかる.図8a~dの4つの拡張した転位ループは図4a~dの4つの基底面拡張転位ループを6 3のらせん操作により作画したものである.α/Cまたはβ/A面に乗っているType Aの拡張した転位ループ図4a,cは63のらせん操作により,α/Bまたはγ/A面間に乗るので,Type Bの構造になる.一方図4b,dの転位ループはα/Bまたはγ/A面間に乗るType Bだが,6 3のらせん操作によりα/Cまたはβ/A面間に移るのでType Aに入れ替わる.これらの転位ループの_ __バーガース・ベクトルはb=1/3[1210],b=1/3[1210]である.この図8a~dの4つの拡張した転位ループにさらに6 3のらせん操作を行うと,図8e~hに示す基底面転位ループが現れる.63のらせん操作を繰り返すと交互にType A,Type Bが現れ,図4a~dと図8a~gに示す合計12個の異なる向きと配置をもつコア構造の基底面転位ループを作ることができる.これらの12個の基底面転位ループは,Shockley型積層欠陥の周囲に付随している部分転位のコア構造の解析についての指針を与えてくれる.26),30)積層欠陥面の上下での結晶面の積層の順番を示すインデックスとしていくつかの表記方法が利用されている.最も一般的な表記方法で,3C-SiC[111],4H-SiC[0001]方向の結晶面の積層の順番を示すと,ABCABCABCABC3C-SiCA’C’AB A’C’ABA’C’AB 4H-SiCここでA→B,B→C,C→Aの昇順の場合Δの記号,C→B,B→A,A→Cの降順の場合∇の記号を用いると4H-SiCの完全結晶ではΔが2回,∇が2回交互に現れる.Shockley型積層欠陥を導入すると,ΔΔΔ∇となる場合とΔ∇ΔΔとなる場合はType AのShockley型積層欠陥,∇∇∇Δとなる場合と,Δ∇∇∇として現れる場合はType BのShockley型積層欠陥となる.ABCの表記や,Δ,∇による表記は結晶面の積層の順番と積層欠陥の位置を示している.これらの記号のみからでは,積層欠陥の周囲に付随するSiコアやCコア部分転位の配置を知ることはできない.これらの表記と,完全転位のバーガース・ベクトルの向き,六方晶の構造を考慮すると,図4,図8図8で示されている12個の転位ループに整理することができる.6 3らせん操作によって生成される各種基底面転位ループ.(Various dislocation loops generated by the 6 3screw operations.)(a),(b),(c),(d)は図4に示している4つの基底面転位に6 3のらせん操作を行うことにより生成する4つの基底面転ループ.(e),(f),(g),(h)は,図4の4つの基底面転位に63のらせん操作を2回行うことにより生成される基底面転ループ.7.REDG効果による2重菱形と1重菱形のShockley型積層欠陥の形成図9にREDG効果により出現する2重菱形積層欠陥の形成のモデル図を示す.図9a~dは転位線の方向を__±[1100]に固定したときの,b=±1/3[1120]の基底面Siコア刃状転位を示している.図9aとc,図9bとdはそれぞれ鏡映対称の関係にある.図9aとb,図9cとdはそれぞれ映進対称の関係にある.これらの転位は電力素子のp-i-n構造のi領域に存在し,両端は貫通刃状転位で固定されているとする.REDG効果によりSiコア30度部分転位が現れ,転位に対して垂直方向に動きShockley型積層欠陥の面積を増大させていく.一方Cコア30度部分転位は動かず,Siコア30度部分転位の運動に伴い延伸されていく.これにより図9e,fのような2重菱形積_層欠陥が形成される.b=1/3[1120]Type Aの基底面転位ループ図4aの部分転位の各分枝b,c,e,f,j,k,g,hは,図9eの同一インデックス部と同じ欠陥構造を形成している.図9aとcはいずれもType AのSiコア刃状転位で,bとζの両方が逆方向なので同じ構造の欠陥であり,いずれも図9eの2重菱形Shockley型積層欠陥を形成する.154日本結晶学会誌第62巻第3号(2020)