ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No3

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概要

日本結晶学会誌Vol62No3

4H-SiC電力素子中でのREDG効果により成長したShockley型積層欠陥の形状についての解析3030図6各種基底面転位のコントラストの模式図.(Illustrationson the_ _contrasts of various basal-plane dislocations.)_g=1128の回折条件で観察されるb=1/3[1120]の基底面転位のコントラスト.(a)ζとbが平行ならせん基底面転位.(b)ζとbが反平行ならせん基底面転位.(c)基底面Siコア刃状転位.(d)基底面Cコア刃状転位のコントラスト.さな発散角で高い像分解能が確保でき,なおかつ十分な回折強度を確保でき,X線の波長を連続的に選択することが可能であるという利点がある.図2a,bはSiコア刃状転位とCコア刃状転位の周りの歪を模式的に示している.図2aに示すようにSiコア刃状転位はバーガース・ベクトルとは直交する方向の歪として(0001)面の上凸の歪場をもっている.この歪により放射光Berg-Barrett法ではSiコア刃状転位は白いコントラストをもつ.図2bに示すようにCコア刃状転位は下凸の歪場が存在する.観察では黒いコントラストの転位として観察されている.われわれはトポグラフ像を原子核乾板で撮影しており,原子核乾板では,白いコントラスト部はX線強度が弱い部分であり,黒いコントラストはX線強度が強い部分を示している.各基底面転位のコントラストの観察結果を図6にまとめる.Siコア転位,Cコア転位,bとζの向きが平行,反平行ならせん転位かの識別も可能である.これらの基底面転位の白黒のコントラストの起源の詳細な議論は文献を参照されたい.22)-25),43)-45)以上の基底面転位のコントラストに関する整理はSi面側での観察の場合である.C面側での観察では,Siコア転位,Cコア転位のコントラストは逆転する.5.REDG効果の放射光Berg-Barrett法による観察4H-SiCのエピ層つきウエハにHg-Xeランプの光を長時間照射した結果を図7aの放射光トポグラフ像に示す.b_=1/3[1120]の基底面らせん転位部がSiコア30度部分転位とCコア30度部分転位に分裂し,2つの部分転位の間にShockley型積層欠陥が形成されている.図7bにこの構造の模式図を示す.Siコア30度部分転位は白いコントラストをもち,転位線の方向に沿って少し非対称なコ日本結晶学会誌第62巻第3号(2020)図7 Cコア部分転位とSiコア部分転位に囲まれたShockey型積層欠陥の観察像.(Observed image of Shockleytype stacking fault bounded by C-core partialdislocation__and Si-core partial dislocation.)(_a)g=1128で観察されるb=1/3[1120]の基底面完全らせん転位がREDG効果により拡張_した状態を示す.(b)模式図を示す.b=1/3[011_0]のSiコア30度部分転位とb=1/3[1010]のCコア30度部分転位に分裂しShockley型積層欠陥が形成されている.ントラストを示す.光の照射で,この部分転位が左方向に動いていることが確認されている.また,黒いコントラストをもちながら転位線の方向に沿って少し非対称なコントラストをもつCコア30度部分転位は動かない.Siコア30度部分転位の移動に伴い連続してCコア30度部分転位部分が形成される.このCコア30度部分転位は動かず延伸することが観察されている.REDG効果により形成される積層欠陥は特徴的な形状を示し,さまざまな異なる方向に向いている.積層欠陥の形状や向きと,発生源となった基底面転位のbやζの向きの間に関係があることが推察される.これらの関係を整理するために4H-SiC結晶中の基底面転位ループの構造について整理する.6.4H-SiCの拡張した転位ループ4H-SiC結晶の空間群はP6 3mcである.この構造ではc軸に沿った6 3のらせん軸を中心に反時計方向に60度回転してc軸方向にc/2だけ平行移動すると,もとの結晶_構造と同一の構造が現れる.また{1120}プリズム面に対して鏡映操作を行っても,同一の結晶構造が現れる._さらに{1100}プリズム面に対して鏡映操作を行いc軸方向にc/2だけ平行移動すると,すなわちc-glide操作を行うと,映進対称性により同一の結晶構造が現れる.図_4bは(1100)面をc-glide面として生成される基底面転_位ループ,図4cは(1120)面を鏡映面として生成される基底面転位ループを示している.図4bの転位ループの_バーガース・ベクトルはb=1/3[1120]になる.図4aと同じバーガース・ベクトルだが,基底面完全らせん転位部が拡張した部分転位セグメントでは違いがあり,図4aではSiコア部分転位が左側に存在し,Cコア部分転位は右側に位置しているが,図4bではこの位置関係が逆転_する.図4aはα/Cまたはβ/A面間のb=1/3[1120]の基153