ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No3
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日本結晶学会誌Vol62No3
日本結晶学会誌62,150-157(2020)総合報告4H-SiC電力素子中でのREDG効果により成長したShockley型積層欠陥の形状についての解析産業技術総合研究所,先進パワーエレクトロニクス研究センター松畑洋文筑波大学大学院数理物質科学研究科電子・物理工学専攻関口隆史Hirofumi MATSUHATA and Takashi SEKIGUCHI: Analysis on the Shapes of theShockley type Stacking Faults Generated by the REDG Effect in the 4H-SiC PowerDevicesA complete set of 12 different dissociated states of basal-plane dislocation loops in 4H-SiC hasbeen derived from experimental observations and crystallographic space group discussion. We haveobserved dissociated states of dislocations in 4H-SiC power devices using synchrotron X-ray Berg-Barrett topography, and analysis results are summarized. The arrangement of the results is used todiscuss the shapes of Shockley-type stacking faults which were generated by recombination enhanceddislocation glide. The list of the dissociated states of basal-plane dislocation loops is useful also for theanalysis of dislocation structures in hexagonal lattice.1.はじめに4H-SiCを用いて電力素子を作製すると,電力損失が低減され,さらに電力制御装置の軽量小型化が可能である.1),2)21世紀に入り4H-SiCを材料に用いた電力素子の開発が世界規模で行われてきた.すでに各種の電力素子や,それらを使った電力制御装置が開発され,実用化されている.3)ところで4H-SiCバイポーラー素子に順方向の電流を流すと,抵抗が増大していくという現象が報告されていた.この順方向特性劣化現象は,転位が電子と正孔の再結合中心として働き,再結合により放出されるエネルギーでSiコア30度部分転位が動き,Shockley型積層欠陥の面積が増大するREDG(Recombination EnhancementDislocation Glide)効果によるものである.4)-11)REDG効果は電力素子のp-i-n構造のi層で発生する.4H-SiC結晶中の転位密度は年々減少しているが,動作中に成長するShockley型積層欠陥の原因となる基底面転位はどのように素子中に残存しているのかが問題とされた.われわれは,放射光を用いたBerg-Barrettトポグラフ法や,SEM-EBIC,顕微photo-luminescence装置を用いて,実際の電力素子構造で順方向特性劣化の様子を観察してきた.12)-19)同時にこの放射光トポグラフ法で観察される格子欠陥像の解析を行ってきた.20)-30)これらの観察により順方向特性劣化で形成される積層欠陥の形状は結晶学的な規則に従っていることがわかった.この規則を利用すると積層欠陥の発生源となる基底面転位の位置,さらに積層欠陥の成長状態,コア構造が異なる部分転位の配置などが容易に判別されることがわかった.本報告では,まず4H-SiCの基底面転位,Siコア部分転位,Cコア部分転位について説明する.次に放射光トポグラフ法による観察結果と結晶学を基にした12種類の拡張した転位ループの分類を示し,REDG効果により大きく成長する2重や1重の菱形Shockley型積層欠陥の形状について説明する.また,成長した積層欠陥を解析したことにより,REDG効果を引き起こす基底面転位の存在原因が明らかとなり,プロセスを改良しメーカーの電力素子の特性劣化抑制の成功につながった例を示す.2.基底面転位のバーガース・ベクトルとコア構造4H-SiCの(0001)ウエハでは,円形の周囲の一部に平坦部が作られている.長い平坦部は第1オリエンテー_ション・フラット(オリフラ)と称され[1100]方向を__示し,短い平坦部は第2オリフラと称され[1 120]方向を示している.ウエハ形状と結晶方位は国際半導体規格によって一意的に定義されている.31)電力素子作製は通常SiCウエハのSi面側(0001)で行われている.エピタキシャル層成長は4H積層構造を維持するためステップフローモードで行い,ウエハ表面の方位は[0001]方向_から数度程度,[1120]方向に傾くように設定されてい__ _る.このため,[1120]方向は,[1210],[2110]方向とは異なる特徴が発現することがある.32)4H-SiCの積層構造を図1に示す.T1,T2,T1’,T3’の4個の四面体により構成され,これらの四面体の中心にはSi原子,四隅にはC原150日本結晶学会誌第62巻第3号(2020)