ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No2

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概要

日本結晶学会誌Vol62No2

AsCA2019会議参加記アジア結晶学連合会長のProfessor Gautam R. DESIRAJU(中央)と受賞者(右から2人目が筆者)Rising Star Award Sessionで講演を行う様子勘違いから始まりました.実はRising Star Award受賞の連絡の中で,ポスター発表も行えるとの旨が記載されており,そのまま何も疑うことなくポスターを準備しておりました.しかし,ポスター会場のリストには私の名前はなく,焦りました.運営の方々に聞いても「Rising StarAwardeeは最終日の午後にあるSymposiumでの口頭発表のみです」との回答でした.せっかくポスターを印刷して海を渡ってきたものですから,ポスター発表も行わせてほしいとお願いすると,快く承認してくださいました.分野は違いましたが,空いていたポスターボードを使用させていただくことができました.いざポスター発表を行うと,やはり見に来てくださる方々はいらっしゃいました.「リストにはないけど,これは君の研究なのか?」という質問から,私の拙い発表を興味深く聞いてくださり,活発なディスカッションまで発展させることができました.特に印象に残っているコメントを紹介させていただきますと,タンパク質結晶構造解析用プログラムパッケージであるCCP4プログラムを開発されているイギリスのDr. Eugene Krissinel氏から,「最近はX線ではなく,電子線回折を利用したタンパク質結晶の構造解析も増えている.電子線ではすでに動力学的回折効果が報告されており,結晶を薄くするなどのpreparationを工夫することで構造解析を行っている.しかし,君の研究はX線でも動力学的回折効果が見られているということだね.これは予想していなかったし,非常に重要な結果だ.ぜひ参考にしたい.」等のコメントをいただきました.Dr. Eugene Krissinel氏を含め,その他AsCA2019看板の前にて研究室メンバーと(右から2人目が筆者)にも興味をもってくださったさまざまな国の研究者の方々にその場で論文の情報を共有しました.私としては,勘違いから発生したポスター発表ではありましたが,さまざまな意見交換や議論まで残せたという結果は,今となってはRising Star Awardの受賞よりも嬉しく感じております.さらに今思うこととすると,人同士直接情報を共有するということ,学会に参加するということは非常に重要であると感じました.さまざまな情報が簡単に得られる今の時代であっても,実際に学会に足を運び,自分の目で世界中の研究成果を各研究者から直接得られ,その場で議論できる国際会議への参加は大変意義のあることであると思います.最後に,AsCAに参加するのは今回が初めてでしたが,今回の貴重な経験を今後の研究活動に活かしながら,日々精進してまいります.このような機会を与えてくださいました日本結晶学会に厚くお礼申し上げます.日本結晶学会誌第62巻第2号(2020)121