ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No2
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日本結晶学会誌Vol62No2
日本結晶学会誌62,118-121(2020)AsCA2019会議参加記AsCA2019 Singapore参加記大阪府立大学理学系研究科芦谷拓嵩2019年12月17日~20日の4日間,シンガポールのシンガポール国立大学でAsCA2019が開催された.国際会議への参加も初めてであったが,小学生以来の海外渡航であり,観光地としても人気のシンガポールは非常に楽しみであった.学会時期は雨期にあたり,参加期間中も夕方になれば雷雨が降っていた.赤道付近に位置するため,屋外は非常に暑い反面,室内は少し寒く感じるほど冷房が効いており,暑さと寒さで少し過ごしづらさを感じた.シンガポールの街は東南アジア特有の雰囲気とは異なり,高層ビルが立ち並ぶなど近代的な街並みが印象的であった.ホテルから会場へはバスを利用したが,窓から見える英語標識などに異国を感じながらも,そこを走る車のほとんどが日本製で不思議な気分であった.学会会場のシンガポール国立大学はシンガポール南西部のケントリッジと呼ばれる丘一帯に位置し,迷子になりそうなほど広大な敷地面積をもつ.実際に学会初日には,会場がわからず少し迷ってしまった.また,世界トップクラスの大学として有名であり,ご存じの方も多いのではないだろうか.会場は,ポスター展示会場,口頭発表用の大ホールと小ホールが2つあり,6つのkeynote,24のマイクロシンポジウムセッション,初開催となったフラッシュプレゼンテーションなどが行われた.ポスターセッションは17日~19日の3日間,一日の最後に行わ図1 Opening Ceremony直後のPrenary talkの様子れた.ポスターセッション中はビールを片手にディスカッションを交わしている参加者も見かけた.私は今回のAsCA2019に初日から参加した.2日目以降は多様なマイクロシンポジウムが平行して行われた.すべてのセッションに参加することはできないため,MOF/PCP関係の研究に従事していることもあり,MOF/PCPに関係するセッションを中心に参加した.この分野は非常に活発な研究が行われており,AsCA2019内でも2つのマイクロシンポジウムセッションが設けられていた.まったく新しい物質の設計や新たな物性の付与など,多様な研究が報告されていた.当然その物性の大部分が結晶構造に依存していることを再認識した.MOF/PCP関係の発表では2日目に北川進先生のPlenarytalkを拝聴することができ,非常に良い経験であった.MOF/PCPは現在も発展を続けている分野であり,第4世代の研究が始まっている.第1世代は二次元の研究,第2世代は三次元のDynamics,第3世代は三次元の中でもLocal Dynamics,そして現在進んでいる第4世代は表面のDynamicsである.この第4世代の物質では従来の技術だけでなく,表面の情報を得る新たな技術の発展が望まれ,非常に興味深い内容であった.また,学会初日に行われた,Keynote Address2の加藤昌子先生の講演も印象に残っている.講演タイトルは“SoftCrystals:Flexible Response Systems with High StructuralOrder”であった.構造秩序の程度は構造変換の活性化エネルギーとおおまかに相関し,高い活性化エネルギーをもつ物質ほど構造秩序の高い硬質結晶となる.講演では,高い構造秩序を有するが比較的低い活性化エネルギーをもつ“ソフトクリスタル”と呼ばれる新しい材料に関する興味深い例が多く紹介されていた.その中にベイポクロミズムによるプロトン伝導を示すクロム金属錯体があった.同様に,外部刺激に応答した色などの視覚的変化に着目した研究はいくつかのマイクロシンポジウムでも報告されていた.外部刺激に応答しさまざまな物性を発現させることは,MOF/PCPの最大の特徴の1つである.これらの物性を理解するために結晶構造を理解することが不可欠であると私は考える.しかし,ガス吸着状態の結晶構造解析を行っているものは珍しく,比較的堅い骨格構造をもつものに限られていた.MOF/PCPの研究はこれだけ活発であるにもかかわらず,精密な結晶構造118日本結晶学会誌第62巻第2号(2020)