ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No2
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日本結晶学会誌Vol62No2
[NiFe]ヒドロゲナーゼ成熟化の構造生物学図6HypAB複合体の結晶構造解析.(Crystal structures of the HypAB complex.)(A)T. kodakarensis由来HypA-HypB(ATPase型)複合体の結晶構造,29)(B)HypA-HypBAT間の相互作用様式,(C)複合体形成に伴うHypAの構造変化,(D)複合体中のHypAにおけるNi結合サイト.質ファミリーに属しており,保存されたGタンパク質ドメインと多様的なN末端領域で構成されている.N末領域の配列から,さらに次の3つのグループに分類される.グループ1:多数のNi 2+イオンを結合できるポリヒスチジン領域をもつ;グループ2:N末にCXXCGC配列をもち,1個のNi 2+イオンを結合できる;グループ3:ほかの2つのグループに見られたN末領域が欠けたHypB.25)これまでに,グループ3に分類されるMethanocaldococcusjannaschiixx由来,26)27Archeoglobus fulgidus由来)およびH. pylori由来のHypB 25)の結晶構造が報告されている(図5B).HypBの全体構造はGタンパク質ドメインとN末のαヘリックスで構成されており,GTP/GDPを挟み込むように二量体を形成している.全体構造は,SIMIBIクラスGタンパク質ファミリーと類似のフォールドである.Gタンパク質ドメインの保存されたシステイン残基は,NiまたはZnイオンとの結合能を有している.構造解析の結果,GTPaseのスイッチ領域と金属結合サイトが連結しており,GTPの加水分解に伴う構造変化によってNi 2+イオンが受け渡されることが推定される.興味深いことに,T. kodakarensisを含むいくつかのアーキアでは,HypBホモログ遺伝子はゲノムにコードされておらず,代わりにATPaseタンパク質がhypA遺伝子の隣にコードされている.筆者らは,このタンパク質がHypBの機能的ホモログ(ATPase型HypB)として機能していることを明らかにし,その結晶構造を決定した(図5C).28)T. kodakarensis由来ATPase型HypB(HypB AT)の立体構造は,GTPase型HypBとの配列相同性は低い日本結晶学会誌第62巻第2号(2020)ものの,GTPase型HypBと同様にSIMIBIクラスGタンパク質ファミリーと類似のフォールドで,ADPを介した二量体構造をとっていた(図5C).筆者らは,HypB ATのATPase活性とHypAとの関係性を調べた.29)相互作用解析の結果,ADP結合状態やヌクレオチド非結合状態ではなくATP結合状態で,HypB ATがHypAに相互作用できることがわかった.またHypB ATのATPase活性は,HypA存在下で約3倍上昇することがわかり,両者の相互作用が支持された.そこでATPγSまたはAMPPCP結合型HypB ATとHypAとの複合体を調製し,HypA-HypB AT複合体の結晶構造を1.63~3.1 A分解能で決定した(図6A).29)構造解析の結果,HypA-HypB AT複合体では,2分子のHypAがHypB ATのATP結合部位と反対側の位置に結合しており,3つの相互作用部位を介して複合体を形成していることが明らかになった(図6A,B).相互作用部位1では,HypBのN末αヘリックスがほどけて,HypAのNi結合ドメインと相互作用していた(図6B上).相互作用部位2では,HypB ATの疎水性領域がHypAのZn結合ドメインのα3,α4ヘリックスと相互作用している.相互作用部位3はHypAのZnフィンガー領域ともう片側のHypB ATとの間で形成されており,HypB ATの二量体形成が複合体形成に必須であることが示唆された(図6B下).また複合体形成によって,HypAのZn結合ドメインに大きな構造変化が誘導されることがわかった(図6C).HypB ATとの結合に伴い,Zn結合ドメインの3つの3 10ヘリックスは,HypB側に移動して2本のαヘリックスに95