ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No2

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概要

日本結晶学会誌Vol62No2

渡部聡,三木邦夫図4HypCDE三者複合体の結晶構造解析.(Crystal structures of HypCDE complex.)(A)T. kodakarensis由来HypCDE複合体の結晶構造,18)(B)HypC-HypE間の相互作用様式,(C)HypD-HypE間の相互作用様式,(D)三者複合体形成による各保存モチーフの連携の構造基盤,(E)Feのシアノ化反応機構モデル.図5HypAおよびHypBの結晶構造解析.(Crystal structures of HypA and HypB.)(A)T. kodakarensis由来HypAの結晶構造,23)(B)H. pylori由来GTPase型HypBの結晶構造,25)(C)T. kodakarensis由来ATPase型HypBの結晶構造.28)がシアノ化HypE-Cys338に求核攻撃して,シアノ基がFeに転移されると推定される(図4E).その後,HypDとHypE間やHypD内で形成されたジスルフィド結合は,FTRと同様のメカニズムで,[4Fe4S]クラスターからの酸化還元カスケードによって元の還元状態に戻ると推定される.もう1つの補因子であるCOの生合成については,好気性細菌において,HypXと呼ばれる別の成熟化因子がN 10 -ホルミルテトラヒドロ葉酸からCOを生合成することが示され,HypXからHypCD複合体に直接受け渡されると考えられている.21,22)一方,嫌気性微生物でのCOの生合成過程はまだ明らかにされておらず,今後の展開が待たれる.2.4 HypA-HypBによるNi 2+イオンの取り込みHypAとHypBは,協同してヒドロゲナーゼにNi 2+イオンを組み込む役割を担っている.NiメタロシャペロンであるHypAは,Ni 2+イオンに対して0.1~2μMの親和性で結合し,ヒドロゲナーゼと直接相互すると考えられている.これまでに,T. kodakarensis由来HypAの結晶23構造)とHelicobactor pylori由来HypAのNMR構造24)が報告されている.HypAの全体構造は,Ni結合ドメインとZn結合ドメインで構成されている(図5A).Ni結合ドメインの保存されたN末端のMHEモチーフが,Niとの結合にかかわっている.Zn結合ドメインは,4つのシステイン残基で構成されたZnフィンガーモチーフ(CXXCX nCPXC)によってZn原子を配位している.またT. kodakarensis由来HypAのZn結合ドメインでは,アーキアに特有の長いループ挿入が見られる.Znフィンガー周辺のアミノ酸残基は保存性が低く,生物種間での多様性が見られる.HypBはメタロシャペロンとして機能するGタンパク94日本結晶学会誌第62巻第2号(2020)