ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No2
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日本結晶学会誌Vol62No2
[NiFe]ヒドロゲナーゼ成熟化の構造生物学図3HypCおよびHypDの結晶構造解析.(Crystal structures of HypC and HypD.)(A)T. kodakarensis由来HypCの結晶構造,9)(B)T. kodakarensis由来HypDの結晶構造,9)(C)T. kodakarensis由来HypC-HypD複合体の結晶構造.18)モイルリン酸の受け渡しが示唆された.現在提唱されている反応機構では,ACPドメインおよびYrdC様ドメインにおいて,カルバモイルリン酸はカルバメートを経てカルバモイルアデニレートに変換され,最終的にKae1様ドメインにおいて,HypEのC末システイン残基にカルバモイル基が受け渡されると考えられている.実際にHypE-HypF複合体の結晶構造解析によって(図2D),HypE二量体の外側にHypFが結合し,HypEのC末テールがKae1の活性部位に挿入しうることが示唆された.12)2.3 HypCDEによるFe(CN)2CO基の生合成HypEによって合成されたCN基は,HypC-HypD複合体に受け渡され,そこでFeに配位される.さらにCOがFeに配位した後,HypCD複合体は,Fe(CN)2CO基をヒドロゲナーゼ大サブユニットへ組み込むと考えられている.16)HypCはメタロシャペロンとして,HypDと協同してヒドロゲナーゼにFe(CN)2CO基を組み込む役割を担ってい9る.これまでにT. kodakarensis由来HypCの結晶構造)と,17大腸菌のHypCのNMR構造)が報告されている.HypCの全体構造は5本のβストランドで構成されたβバレルドメインとC末のαヘリックスで構成されており,βバレルドメインはDNA/RNA結合タンパク質によく見られるOBフォールドに類似したフォールドである(図3A).Fe原子のシアノ化の足場として機能しているHypDの全体構造は,2つのα/βドメインと鉄イオウクラスター結合ドメインで構成されており,ユニークで複雑なトポロジーで構成されている(図3B).9)HypDの鉄イオウクラスター結合ドメインは,[4Fe4S]クラスターを配位しており,[4Fe4S]クラスター近傍にはさらに2組のジスルフィド結合が配置しているという特徴がある.この[4Fe4S]クラスター環境は,フェレドキシン・チオレドキシン・レダクターゼ(FTR)の活性部位中心と非常によく似ていることから,HypDにはFTRと類似の酸化還元カスケードが存在することが示唆された.筆者らは,Fe(CN)2CO基生合成の際に形成されるHypC-HypD複合体およびHypC-HypD-HypE三者複合体の構造解析を行った.18)HypCとHypDは1:1のモル比で比較的強固な複合体(Kd=140 nM)を形成することがわ日本結晶学会誌第62巻第2号(2020)かり,HypCD複合体の結晶構造は2.55 A分解能で決定できた18)(図3C).HypCD複合体では,HypCのβバレルドメインがHypDの2つのα/βドメインに挟まれる形で相互作用していることがわかった.一方,HypCのC末のαヘリックスは大きく相対配置が変化し,HypDとの相互作用にはかかわっておらず,ヒドロゲナーゼ本体との相互作用にかかわっていることが示唆された.HypCDE三者複合体形成について,相互作用解析の結果,HypCとHypEおよびHypDとHypE間での相互作用は確認できなかったが,HypEとHypCD複合体を混合させた場合にのみ,三者の弱い相互作用が確認できた(K d=1.9μM).すなわち,HypCD複合体を形成したのちに,HypEとの過渡的な複合体が形成されることが明らかになった.三者複合体の結晶化に際しては,その相互作用の弱さから,複合体として単離することは困難であったため,3つのタンパク質を高濃度で混合した試料を用いることで結晶化に成功し,2.25~2.7 A分解能で結晶構造を決定した(図4A).18)構造解析の結果,HypCDE三者複合体において,HypCD複合体はHypE二量体の外側に結合していることが明らかになった.複合体形成においては,HypEのβ11-β12ループがHypDの4本のヘリックスに捉えられており,またHypCのβ2-β3ループがHypEのα6ヘリックス周辺と相互作用しており,HypCを親指,HypDを残りの4本の指として,HypEを捕まえている様子が明らかになった(図4B,C).これら構造解析の結果,HypCDE三者複合体を形成することで,HypCDEの保存された各システイン残基がHypDの分子中央に集まることが明らかになった(図4D).18)HypDの4つの保存モチーフ(CGXH,GPGCPVC,GFETT,PXHVSモチーフ)19)は分子中央のクレフト部位に集中しており,Feのシアノ化反応を触媒することが予想された.HypCD複合体において,Feの組込みに関与しているHypCの保存されたCys2 20)は,HypDのCGXHモチーフのCys38に近接しており,この2つのシステイン残基がFe原子に配位することが示唆された.一方,三者複合体において,HypEのC末端はHypDのGPGCPCVモチーフ近傍に接近できることがわかった.GPGCPCV内のCys6693