ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No2
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日本結晶学会誌Vol62No2
渡部聡,三木邦夫図2HypEおよびHypFの結晶構造解析.(Crystal structure of HypE and HypF.)(A)T. kodakarensis由来HypEの結晶構造,9,13)(B)カルバモイル化システイン周辺の相互作用,13)(C)C. subterraneus由来HypFの結晶構造,12)(D)C.subterraneus由来HypE-HypFの複合体の結晶構造.12)[NiFe]ヒドロゲナーゼに[NiFe]クラスターを組み込む成熟化にかかわる遺伝子群として,6種類のHypタンパク質(Hydrogenase pleiotropicタンパク質)(HypABCDEF)が,ドイツのA. Bock博士らのグループによって,その必須因子として同定された(図1B).6,7)成熟化では,まず4つの因子(HypCDEF)によって,Fe(CN)2CO基が生合成され,ヒドロゲナーゼの大サブユニットに組み込まれる(図1B,1~5).次に残りの2因子(HypAB)によって,Ni 2+イオンが組み込まれる(図1B,6).最後に特異的なエンドペプチダーゼによってC末端領域が切断された後に(図1B,7),大サブユニットは小サブユニットと会合し成熟化は完了する(図1B,8).2.2 HypEとHypFによるCN基の生合成Feに配位されるCN基は,カルバモイルリン酸(NH 2CO-2OPO-3)を前駆体として利用し,HypEとHypFの働きで合成される.8)カルバモイル転移酵素ドメインをもつHypFによって,カルバモイルリン酸のカルバモイル基(-CONH 2)がHypEの保存されたC末端システインに転位される(図1B,1).次にHypEのATP依存的脱水反応によって,カルバモイル基はチオシアネート(-S-CN)としてCN基に変換される(図1B,1).HypEの結晶構造は,筆者らが解析した高い水素発生能を有する超好熱性アーキアThermococcus kodakarensis(T. kodakarensis)由来HypEのほか,9)Desulfovibriovulgaris,10)大腸菌,11)およびCaldanaerobacter subterraneus12由来)の結晶構造が報告されている.HypEの全体構造は,2つのα/βドメイン(ドメインA,B)とC末テール領域で構成されており,ドメインAのβシート部位が互いに向き合うようにして二量体を形成している(図2A).全体構造はプリンリボヌクレオチドの生合成にかかわるPurMスーパーファミリーと類似の構造である.HypEのC末テールは,HypEのATP結合状態と連動して外側と内側のコンフォメーションをとる.ATP非結合状態では,C末テール領域は外側に延長したコンフォメーションをとるが,いったんATPが結合すると,C末テールは分子内部に入り込むコンフォメーションをとる.つまりHypEは,外側のコンフォメーションにおいてカルバモイル基を受け取った後,C末テールを分子内側に構造変化させ,ATP依存的なカルバモイル基の脱水反応を触媒する.実際に,筆者らはカルバモイル化HypEとシアノ化HypEの高分解能結晶構造を決定し,保存されたリジン残基とグルタミン酸を介した2段階の脱水反応機構を明らかにした(図2B).13)HypFは,Hypタンパク質の中で最大のタンパク質であり,全体構造はアシルフォスファターゼ様(ACP)ドメイン,Znフィンガードメイン,YrdC様ドメイン,カルバモイル転移酵素様ドメイン(Kae1ドメイン)で構成されており,これまでにC. subterraneus,12)E. coli 14)および15T. kodakarensis由来)のHypFの結晶構造が報告されている(図2C).HypFの4つのドメインのうちACPドメインは,その相対配置が報告された構造間で大きく異なっており,ACPドメインの柔軟性が示唆される.またACPドメインとYrdC様ドメインのATP結合部位は,分子内部のトンネルでつながっており,ドメイン間でのカルバ92日本結晶学会誌第62巻第2号(2020)