ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No1
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日本結晶学会誌Vol62No1
クリスタリット磁気スキルミオンMagnetic Skyrmionスパース・モデリングSparse Modeling疎性モデリングとも呼ばれるスパース・モデリングは,解析対象とする現象や計測データを説明するために必要な要因(成分)が少数である仮定に基づき,適切な情報量規準に従って主要因(主成分)を抽出する方法である.説明変数が少数なスパース解を得る方法として,回帰関数の誤差関数に,説明変数の一次ノルムを非スパース性のペナルティ項として加えたL1正則化法(LASSO法:1996年,R. Tibshirani)などが用いられる.このペナルティ項は一次ノルムにスパース性を制御するハイパーパラメータαが掛けられており,αが0であれば,誤差関数を最小化する最小二乗法と同じ解が得られる.一方αが無限大の極限では,誤差関数は無視されて,主要素が存在せずデータすべてがノイズと認識する解を得る.計測データにノイズが重畳するのは必然で,L1正則化ではαを適切な情報量規準を用いて決定することにより,ノイズまでを回帰してしまう過学習を避けた回帰解析を可能とする.(熊本大学パルスパワー科学研究所赤井一郎)コヒーレント回折イメージングCoherent Diffraction Imaging(CDI)試料にコヒーレントな光を照射すると,複素屈折率の空間分布に応じて変調を受け,強度や位相が変調した透過光が得られる.その透過光は空間を伝搬するうちに干渉し,十分に遠方においてはフラウンフォーファー回折として観測される.回折強度は透過光をフーリエ変換し,その振幅を二乗したものに比例した強度となる.そのため,回折パターンを逆フーリエ変換することで試料の複素屈折率の空間分布情報を取得することができる.しかし,計測できるのはフーリエ変換の振幅情報のみで,位相の情報が欠損している.位相回復アルゴリズムやホログラフィ法などを使い,計測で失われた位相情報を回復することで,試料像を再構成することが可能となる.(物質・材料研究機構山崎裕一)空間反転対称の破れたカイラル磁性体などにおいて現れる渦状の磁気構造体.スピンの向きを揃えようとする強磁性相互作用とスピンを巻こうとするDzyaloshinskii-Moriya相互作用,磁場によるゼーマンエネルギーの競合によって発現する.典型的なサイズは数~数百nmであり,渦の巻き方に応じてトポロジー数が定義できる.トポロジー安定性により不純物や外乱要因に対して安定に存在できるため,スピントロニクスデバイスなどへの応用が期待されている.(物質・材料研究機構山崎裕一)光電子ホログラフィーPhotoelectron Holography測定試料に軟X線・硬X線を照射し,励起された数百eV~数keVの内殻光電子やオージェ電子の放出角度分布を測定する手法.従来の光電子回折と同じ現象であるが,広い立体角にわたって測定することにより,ホログラムとして扱うことが可能になる.このホログラムには光電子を放出した原子の周囲の立体配列が記録されており,初期情報(モデルや位相など)を必要とすることなく,立体原子配列が得られる.結晶中のドーパントや結晶表面の吸着子などの周期構造をもたない原子の局所構造解析に有効である.内殻光電子分光の原理を利用していることから,原子の価数状態に対してそれぞれの原子配列が得られる.光電子ホログラムから原子配列へ変換する計算はフーリエ変換では難しく,SPEA-L1(Scatteringpattern extraction algorithm with L1 regularization)などの散乱理論をベースにした方法を用いる必要がある.(奈良先端科学技術大学院大学/高輝度光科学研究センター松下智裕)L1正則化L1 Regularization線形回帰モデルの一種でLasso回帰とも言う.入力変数ベクトルxに対し,期待される観測値が基底関数? j(x)とMパラメーターwを用いた線型結合y(x,w)=∑j =1 w j? j(x)で表される場合,観測値t(x)が与えられた時のパラメーターwの推定方法の1つである.wの要素数Mが大きく,解に任意性がある場合,L1正則化は疎な解(0値が多い解)を探索するのに用いられる.通常の最小二乗法に対し,L1正則化項を加えた評価関数を最小化することで解を求める.1 N2 Mw = min∑( t ( x ) ? ( , w)) +w= 1 ny xnλ∑wnj=12j62日本結晶学会誌第62巻第1号(2020)