ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No1
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日本結晶学会誌Vol62No1
X線回折実験とシミュレーションのデータ同化による結晶構造解析図6Number of structures20015010050200015010050大幅に向上していることが見てとれる.このように,ハイブリッドコスト関数の特性を反映した新しい最適化手法を導入することで,メタヒューリスティクスに頼らずとも結晶構造予測の精度を高めることが可能となった.5.おわりに(b) low cristobalite本稿では,X線回折実験データとシミュレーションのデータ同化による,結晶構造予測のための新しいアプローチを紹介した.17),18)性質のまったくことなる複数のコスト関数を組み合わせることで,実験データが不十分で従来の構造解析を行うことができないような場合においても,結晶構造予測の精度を大幅に向上させることができる.われわれは,SiO 2のさまざまな多形以外にも,磁石材料や硫化水素高温超伝導,分子結晶などさまざまな物質にこの手法の適用を進めている.本提案手法は,バルク結晶だけではなく,表面や界面,不純物にも応用可能である.さらに,X線・中性子などの回折データだけではなく,NMRやXPSなどの分光学的データ,TEMなどの実空間データなど,あらゆる実験データとの組み合わせも考えられる.ベイズ推定に基づくデータ同化では,まったく質の異なる複数のデータをその情報量に応じて柔軟に組み合わせ,その予測精度を大幅に向上させることができる.今後,先端的な計算物質科学シミュレーションやさまざまな実験データを「部品」としてモジュール化し,最新のデータ科学の手法により組み合わせていくことで,これまで不可能であった物質の構造予測や物性予測などが進んでいくことが期待される.本稿で紹介した内容は,辻本直人氏,足立大樹氏,明石瞭介氏との共同研究に基づくものです.日本結晶学会誌第62巻第1号(2020)simulated annealingCOM0-54 -53.5 -53 -52.5 -52 -51.5Energy (eV / SiO 2 )低温型クリストバライトに対するデータ同化構造最適化により得られた最終的な結晶構造の全エネルギー分布.(Total energy distribution of final crystalstructure obtained by data-assimilation optimizationfor low cristobalite.)コスト関数の和に対してシミュレーテッドアニーリングを使う場合(上)と比べて,COMを使う(下)ことで,成功確率が6倍以上向上する(文献18)より転載).文献1)物質科学シミュレーションのポータルサイトMateriAppshttps://ma.issp.u-tokyo.ac.jp/2)Y. Konishi, et al.: JPS Conf. Proc. 5, 011007(2015).3)本山裕一,三澤貴宏,加藤岳生,藤堂眞治:固体物理52, 743(2017).4)井戸康太,加藤岳生,三澤貴宏,藤堂眞治:アンサンブル22,74(2020).5)C. W. Glass, A. R. Oganov and N. Hansen: Comp. Phys. Comm.175, 713(2006).6)L. Rastrigin: Automation and Remote Control 24, 1337(1963).7)S. Kirkpatrick, C. Gelatt Jr. and M. Vecchi: Science 220, 671(1983).8)J. Holland: Adaptation in Natural and Artificial Systems, Univ. ofMichigan Press(1975).9)J. Kennedy and R. Eberhart: Proceedings of IEEE InternationalConference on Neural Networks IV, 1942(1995).10)Y. Shi and R. Eberhart: Proceedings of IEEE InternationalConference on Evolutionary Computation, 69(1998).11)K. Hukushima and K. Nemoto: J. Phys. Soc. Jpn. 65, 1604(1996).12)J. Mockus: Proceedings of the IFIP Technical Conference, 400(1974).13)R. ?erny and V. Fbavre-Nicolin: Z. Kristallogr. 222, 105(2007).14)P. Gao, Q. Tong, J. Lv, Y. Wang and Y. Ma: Comp. Phys. Comm.213, 40(2017).15)H. Putz, J. C. Schon and M. Jansen: J. Appl. Cryst. 32, 864(1999).16)O. J. Lanning, et al.: Chem. Phys. Lett. 317, 296(2000).17)N. Tsujimoto, D. Adachi, R. Akashi, S. Todo and S. Tsuneyuki:Phys. Rev. Mater. 2, 053801(2018).18)D. Adachi, N. Tsujimoto, R. Akashi, S. Todo and S. Tsuneyuki:Comp. Phys. Comm. 241, 92(2019).19)樋口知之:データ同化入門,朝倉書店(2011).プロフィール藤堂眞治Synge TODO東京大学大学院理学系研究科Department of Physics, The University of Tokyo〒113-0033東京都文京区本郷7-3-17-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japane-mail: wistaria@phys.s.u-tokyo.ac.jp最終学歴:東京大学大学院理学系研究科博士課程終了,博士(理学)専門分野:計算物理学,統計物理学現在の研究テーマ:強相関量子多体系のためのシミュレーション手法開発,量子相転移,量子ダイナミクス,統計的機械学習による物質科学,オープンソースソフトウェア開発常行真司Shinji TSUNEYUKI東京大学大学院理学系研究科Department of Physics, The University of Tokyo〒113-0033東京都文京区本郷7-3-17-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japane-mail: stsune@phys.s.u-tokyo.ac.jp最終学歴:東京大学大学院理学系研究科修士課程修了,理学博士専門分野:物性理論,計算物質科学現在の研究テーマ:第一原理電子状態計算手法の開発,高圧下の物性,表面・界面物性,固体中の水素,強誘電体,超伝導,熱伝導など55