ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No1
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日本結晶学会誌Vol62No1
パーシステントホモロジーを用いた非晶質物質の回折パターンの理解と二体相関に潜んだトポロジーの抽出周期:2π/Q FSDP~4 A(図5の破線間で太い矢印で示された距離)相関長:2π/dQ FSDP~10 A(図5の灰色の領域内の細い矢印で示された距離)と見積もられ,空隙越しに揃った面がFSDPの起源となる中距離構造と解釈されている.Si5R O5R5R 4R6R6R図5 RMC-MDモデリングより得られたシリカガラスの三次元構造.21)(RMC-MD-generated atomic configurationfor glassy SiO 2.)シミュレーションボックスを紙面方向に約9 Aにスライスした領域でネットワークを形成している原子のみ表示している.R:リング(員環).編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.5.パーシステンスダイヤグラム(PersistenceDiagram,PD)5.1シリカのPD前項ではさまざまな非晶質物質の回折パターンを示した.回折パターンの起源をより詳細に理解するために,回折パターンとPDの相関について考察をする.まずPDがどのような情報を与えるかを知るための一例としてシリカガラスと結晶(α-クリストバライト,α-石英,コーサイト)のSiのPD(a)とリング分布(b)についての比較を図6 21)に示す.パーシステントホモロジー解析では,結晶構造解析や構造モデリング・シミュレーションにより得られた三次元座標の原子の半径を同時に増大させ,隣接した原子と重なりリングが出現した点をBirth,さらに増大させリングが消失した点をDeathとしてダイヤグラムを計算する.図6aのシリカガラスのデータを見ると,Death軸に沿った縦長のプロファイルと対角線に沿ったプロファイルが観測される.対角線に近いプロファイルはBirthした後ただちにDeathする寿命の短いリングを,対角線から離れたプロファイルは寿命の長いリングを意味する.本手法の最大の特徴は原子間の結合を定義することなく穴の形(ホモロジー)が解析できる点である.ガラスのダイヤグラムに現れる縦長のプロファイルはガラスを構成する原子がネットワークを形成していることを示しており,Deathの値が大きいほど寿命が長い,すなわちロバストな大きくて対称性の良いリングの存在を意味する.一方,対角線付近のプロファイルは寿命のaα-クリストバライトα-石英コーサイトガラスBirth b k (A 2 )Birth b k (A 2 )bα-クリストバライトα-石英コーサイトガラスNumber of ringsper Si atomDeath d k (A 2 )Birth b k (A 2 )Birth b k (A 2 )n-fold ringn-fold ringn-fold ringn-fold ring図6シリカガラス(d=2.20 g cm-3)およびα-クリストバライト(d=2.30 g cm-3),α-石英(d=2.65 g cm-3),コーサイト(d=2.92 g cm-3)におけるSiのパーシステント図.21)(Si-centric PDs(a)and primitive ring statistics(b)forglassy SiO 2,α-cristobalite,α-quartz and coesite.)日本結晶学会誌第62巻第1号(2020)47