ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No1

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概要

日本結晶学会誌Vol62No1

計測インフォマティクスとデータベースの統合による客観・高速結晶構造解析図5 CNNによる結晶構造分類器.(Crystal structure classifier by using CNN.)されたGPU(Graphics Processing Unit)を用いた.GPUはもともと画像処理のための演算装置で,画像処理で使用するアフィン変換などの演算に特化した回路が組まれている.CNNではアフィン変換を多用するため,GPUを使用することで計算速度の向上が図れる.最近はより汎用のGPU(GPGPU,General-Purpose computing on GraphicsProcessing Units)が一般化してきている.今回使用したGPUはNvidia社のTesla P100である.構成したCNNは,二次元画像(225×225 pixel)の情報を圧縮していく畳み込み層(コンボリューション層とプーリング層を組み合わせたもの)と,その結果得られた情報を一次元に変換して圧縮していく全結合層とで構成される.コンボリューション層(図中conv.層)ではある面内分布をもったフィルタと入力画像との畳み込みを行う.この面内分布が特徴に相当し,結局フィルタの特徴をもつ画像部分が強調されて出力される.プーリング層は,特徴の空間的な揺らぎに対するロバスト性を確保する働きをしており,特定の入力に左右されない特徴の一般化とともに次元圧縮の役を果たしている.フィルタの面内分布はランダムから始められるが,学習が進むにつれて,必要としている特徴を反映するように整えられていく.この畳み込み層を多層にすることで,特徴はさらに圧縮され最終的な結晶分類出力のためのパラメータとなる.今回は,図5に示すとおり畳み込み層は3段とした.その後3段の全結合層により,二次元画像は一次元データに圧縮され最終的には分類したい数の出力に全情報が集約される(今回は後述する2,4,6の三種).全結合層には過学習を防ぐためのドロップアウト層を1層設けた.最適化にはadam(Adaptive momentestimation)を用い,学習の評価には交差エントロピー誤差(cross entropy)を用いた.今回の三種の実験の狙いとスキームを図6および表2に示す.分類対象として,まず閃亜鉛鉱構造のGaAsをベンチマークとして,まったく構造が異なり分類が容易と予想される結晶構造(アナターゼ)を取り上げて実験日本結晶学会誌第62巻第1号(2020)図6予測対象の結晶構造とベンチマーク(GaAs)との対応.(Crystal structures as prediction target, and theircorrelationwithabenchmarkstructure(GaAs).)表2結晶分類実験のスキーム.(Experimental scheme forcrystal structure classification.)結晶数試料結晶構造2GaAs閃亜鉛鉱(基準)TiO 2(A)アナターゼ異なる結晶系類似構造多様な構造し,次に難易度を上げるために結晶系が同じ2種(ダイヤモンド構造と閃亜鉛鉱)を追加し,最後に汎化に向けて2種の新たな構造を加えた(ルチルとクリストバライト).このスキームに従って最大6種類まで分類対象を増やすことで予測精度(Accuracy)の変化から人工知能の能力を評価した.教師データおよびテストデータとなる回折パターン,各200枚はシミュレータSingleCrystal(CrystalMaker Software Limited)を用いて,ランダムな方位について作成した.図7は結晶数を2,4,6と変化させた場合の学習時と検証時(Validationと表示)の精度と損失である.前者は39