ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No1
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日本結晶学会誌Vol62No1
計測インフォマティクスとデータベースの統合による客観・高速結晶構造解析図3提案手法による標準セメント(SRM2686a)の解析.(Proposed analysis of a standard cement sample,SRM 2686a)図4重要度(imp)による微小成分の確からしさの評価.(Most probable minor component obtained from aimportance(imp)defined by equation(2).)表1主要四成分と微小成分のフィッティングにおいて使用した基底関数の数.(Number of Major fourcomponentand minor component used for fitting.)従来法と提案法の比較主要四成分微小成分従来法(人手)41提案手法(NNLS)19172.2.2客観解析次に本手法の客観性について議論をする.本手法では490の基底関数x,言い換えると図2のコンクリートスペクトルライブラリを使って計測データをNNLSで回帰した.このことは,可能性がある成分候補は回帰係数(式4(1)におけるaの成分)の大小はあるがすべて考慮されることを意味する.この人為的な意図を伴わない数理的な処理は,従来の人手において材料候補を恣意的に4つに事前に絞り込んだ場合と大きく異なる.実際,従来法と提案手法で得られた主要四成分と微小成分の数を表1にまとめると,その違いは明確である.本研究の目的に照らしてこの結果を検証するならば,残念ながら解析前に材料を選んだ従来法では客観的に材料を選別したとは言い難い.一方で,確かに提案手法では数理的に可能性がある成分はすべて示されるが,逆に絞り切れていないことは直観的に見てとれる.試料として用いたNISTのSRM 2686aのデータシートによれば,微小成分は少なくとも3種入っているとされるが,微小成分の成分比はペリクレース(Periclase)以外のアルカリ硫酸塩は,1%以下とされているため,一般的なX線回折では十分検出できないと予想される.そのような背景から考えても,17の微小成分の混入を認めるのは物理的に無理があろう.こうした状況を考えると本手法の客観日本結晶学会誌第62巻第1号(2020)性を示すためには,これらの17の微小成分の内から,数理的に最も確からしいものとしてペリクレースを選び取るアルゴリズムの導入と実証実験が必要になる.以下に図2で提案した客観解析に確からしさをくわえて微小成分を特定する手法を述べる.2.2.3客観解析における確からしさの付与ここで確からしさの指標として,重要度impを導入する.式(1)において,あるライブラリ成分x kを強制的に0にして,NNLSを解くことを考える.物理的には特定の物質kを候補から外すことを意味し,当然解析解ではその成分比a kは0になる.すべてのxを使用した場合の通常のNNLSの残差二乗和(RSS,Residual Sum ofSquares)をRSS fullとし,成分kを強制的に0にした場合のRSSをRSS k=0とする.ここで成分kのimpをRSSk=0? RSSimp =RSSfullfull(2)と定義する.すなわち,成分kがなかった場合にどの程度回帰の精度が下がるかを,その成分の重要度として指標化したことになる.impを全成分に対して計算して,大きい順に上位5位をプロットしたものを図4に示す.この図から明らかなとおりペリクレースのimpが最も高く,この指標を導入することによって,恣意的な材料の選択をすることなく,公知情報から微小成分が特定可能であることがわかる.一方で,NISTのデータシートで1%以下のアルカリ硫酸塩成分,アフチタライト(Aphthitalite)とアーカナイト(Arcanite)は図4の材料リストになく,impでは特定できなかった.この点では従来法に対する優位性は得られなかったが,図1で議論したとおり,これらを考慮しなくても残差二乗和5.0×10-6以内で説明可能な測定37