ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No1

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概要

日本結晶学会誌Vol62No1

加藤健一図5非晶質SiO 2データの(a)SS法と(b)MS法による補正時間依存性.(Correction-time evolution of non-crystalline SiO 2data by the(a)SS and(b)MS methods.)のロッドを散乱体として補正データを取得した.5.2 SS法とMS法の比較図5に示したのは,SS法とMS法であらかじめ取得した補正係数を,それとは独立に計測した10 6 C相当の非晶質SiO 2の散乱データに適用した結果である.実際には19,200(=1,280×15)画素分のデータがあるが,補正効果を示すためほぼ平坦とみなせる500画素分のデータのみ示した.最上段は補正する前のデータであり,SS法とMS法で同一のものを使っている.その下段には,補正時間依存性データを示した.図5の中に示した時間は,SS法とMS法でそれぞれ補正係数を求めるためのデータ計測に要した時間である.いずれも,補正時間が長いほど強度のばらつきが小さくなっていることがわかる.SS法とMS法を比較すると,前者で768分かけて補正したデータが,後者では112分で得られているように見える.つまり,MS法の補正効率はSS法に対して約7倍に向上している.実際に補正に使われた画素数はSS法で1,280個,MS法で7倍の8,960個であることから,統計に従った結果と言える.図6には,図5のデータから見積もったTFUの補正時間依存性をプロットした.ポアソンノイズのみからなるTFUも参考に示した.補正前(補正時間ゼロ)の約1%に対して,SS法もMS法も補正時間に応じて連続的に減少していく様子がわかる.SS法とMS法の顕著な相違は,最初の数時間のTFU減少率にある.MS法のこの初期段階における急激な減少が,7倍の高速化に寄与していると理解できる.また,補正時間を長くしてもポアソンノイズに相当するTFUに到達しない要因として,感度ムラノイズ以外のノイズの混入や,4.1で述べた補正の図6非晶質SiO 2データから見積もったTFUの補正時間依存性.(Correction time evolution of TFUestimated from non-crystalline SiO 2 data.)前提となっている2つの条件を完全に満たしていないことなどが挙げられる.5.3ノイズの散乱強度依存性と積分型検出器との比較図7aは,非晶質SiO 2のデータにおけるTFUの散乱強度依存性である.補正前とMS法で補正した後の結果を示した.比較のために,ポアソンノイズに相当する値ものせた.未補正の場合,TFUは10 5 C付近までは減少傾向にはあるものの,それ以降は1%前後で下げ止まる.1%という値は,10 4 Cにおけるポアソンノイズに相当する.このことは,計測時間を長くしたり,入射光強度を強くしたりして10 5 C以上計数したとしても,データ精度の向上は見込めないことを意味している.一方,感度ムラ補正を行うと,10 5 Cまではほぼポアソン分布に従って減少し,それ以降も減少し続けていることがわかる.例えば,10 6 Cでは補正前の約1%から約0.2%に減少している.ここで,誤差全体が互いに独立であるポアソンノイズと感度ムラノイズのみからなると仮定する.する30日本結晶学会誌第62巻第1号(2020)