ブックタイトル日本結晶学会誌Vol62No1

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概要

日本結晶学会誌Vol62No1

コヒーレント回折イメージングにおけるスパース位相回復アルゴリズムと正則化パラメータを設定すれば良いので,f ( r )? 12= arg min?Fobs? F ?? f ( r ) ? ?f ( r )l? 2N 2 2∈S?S+λf ( r ) ? f +λ' f ( r )↓ll 1 }(14)1のように書ける.f↓の値,サポートSの形,f(r)のスパース性という事前情報をすべて定式化できたことになる*14.サポート領域の内外で場合分けして,式(10)から式(13)の式変形と同じ要領で考えると,fk+1( r )f' ( r)? f ( r) +λf ( r)? f ( r) r∈S2↓l1(15)2f' k( r)? f ( r) +λ' f ( r)r?Sk k l k? 2?f k ( r)?1k l k2l1= arg min?1??22となる.サポート内でf↓の分だけかさ上げされていることに注意すると,図3磁気スキルミオンのコヒーレント軟X線回折イメージングとスパース位相回復アルゴリズムによる実像再構成.(Coherent soft X-ray diffraction imaging of magneticskyrmion lattice and image reconstruction by sparsephase retrieval algorithm.)(a)磁気スキルミオンの磁気構造.試料中に磁気スキルミオンが密に存在する場合には三角格子を形成する.(b)数値実験で用いたモデル画像.磁気スキルミオンがまばらにしか存在しない状況をモデル化している.クマ型のように低対称なサポートを設定することで,位相回復アルゴリズムの収束性を向上させている.(c)モデル画像をフーリエ変換して計算される回折パターン.(d)ダイレクトビームキャッチャの影響で中心部分のデータと,ノイズの影響を避けるために強度が弱い高角側のデータがない回折パターン.(e)(c)の回折パターンのようにノイズを含まないデータから得られた実空間像.ノイズと欠損領域を含むデータに対してHIO法では磁気スキルミオンを再構成できていない[(f)]のに対して,スパース位相回復法(SpPRA)では磁気スキルミオンの位置情報が抽出できている.X線自体がほとんど透過しないので,f(r)がより強いスパースである.よって,サポート内と外で異なる基準値fn+?S f'nf f S↓↓( )?( )?? ? ??=+∈1 rλr r??? S f' n( )λ?? r ? ? r ? S(16)と実空間の解を更新しながら反復的フーリエ変換を行えば最適解が得られる.プログラムの実行速度を考えるとN 2個の各ピクセルにおいてif文の判定式を使って解の更新を行うのには時間を要すが,Sλ(x)の式を少し工夫すると,例えばr?Sにおける式の更新式はf ( ) 11n+ = f' ( )n? + f' ( )1r rλ' ( nr ?λ' )2211? f' ( )nr +λ' + ( f' ( )nr +λ' )(17)22のように絶対値と和の計算だけで書くことができる.Sの外側で差分を計算するHIOアルゴリズムとほぼ同じ計算時間で解の更新が可能である.3.4数値実験スパースな説明変数を有するモデル画像を使った数値実験によって,スパース位相回復法の有用性を見て行く.図3bのように低対称なサポート形状に磁気スキルミオンがスパースに存在する画像を考える*15.11)これを離散フーリエ変換し,その絶対値を自乗して計数を掛けることで観測に対応する回折パターンが得られる(図3c).CCDカメラで回折パターンを計測する場合には,暗電流によるバックグラウンドが想定されるため,モデルから計算された各ピクセルの強度にバックグラウンドを加え,その強度に対してガウシアンノイズを加えた回折パターンを生成する.ダイナミックレンジの制限から,強すぎるダイレクトビームがあたる中心付近にはダイレクトビームキャッチャーを設置することが多く,その場合*14s正則化パラメータはスパースネスを考慮すると,λ?λ'とするのが良い.*15低対称なサポート形状を用いると解の自由度を制限することができるため収束性が向上することがわかっている.面内に鏡像面がなくなるようにクマ型にして左右の耳のサイズを少し変えている.日本結晶学会誌第62巻第1号(2020)15