ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No4

ページ
45/68

このページは 日本結晶学会誌Vol61No4 の電子ブックに掲載されている45ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol61No4

単結晶中性子回折を利用した精密構造解析図4単結晶中性子回折とMEM解析で得られたNdOs 4Sb 12の室温での三次元核密度分布.(3D nuclear scatteringdensity distribution of NdOs 4Sb 12 obtained by singlecrystal neutron diffraction and MEM analysis.)図6単結晶中性子回折+MEM解析で得られたPrRu 4Sb 12の室温での三次元核密度分布.(3D nuclear scatteringdensity distribution of PrRu 4Sb 12 obtained by singlecrystal neutron diffraction and MEM analysis.)規格化核散乱長密度86420ROs 4 Sb 12室温PrNd-0.05 0 0.05核散乱長密度( fm / A 3 )806040200PrT 4 Sb 12室温OsRu-0.05 0 0.05[ x 0 0 ] ( nm )[ x 0 0 ] ( nm )図5NdOs 4Sb 12中のNdの室温での[100]方向の核散乱長密度分布.(Nuclear scattering length densityprofile of Nd in NdOs 4Sb 12 along[100]at roomtemperature.)参照としてPrの結果を示す.図7 PrRu 4Sb 12およびPrOs 4Sb 12中のPrの室温での[100]方向の核散乱長密度分布.(Nuclear scattering lengthdensity profile of Pr in PrRu 4Sb 12 and PrOs 4Sb 12 along[100]at room temperature.)ながら異なる物性を示すPrRu 4Sb 12を対象として同様の実験を行った.PrRu 4Sb 12もPrOs 4Sb 12と同じく超伝導体で,超伝導転移温度もTc=1.3 Kと近い値をもつ一方でPrOs 4Sb 12の大きな特徴である重い電子状態は消失している.最小自乗解析では,R=1.93%,ωR=2.01%とほか2つとほぼ同程度の良い結果が得られた.格子定数もPrOs 4Sb 12と同じである.一方でPrの等方性原子変位パラメータU isoは,300 pm 2と大きな値ではあるが,PrOs 4Sb 12とNdOs 4Sb 12と比較して小さくなっている.PrRu 4Sb 12についてMEM解析を行うと,R=1.92%,ωR=1.84%と向上したものの,ωRの改善は小さくなっている.得られた核密度分布を図6に示す.その分布形状はNdOs 4Sb 12に近く〈100〉方向に伸びた構造をしており,PrOs 4Sb 12のPrとは形状が異なっている.図7に示す断面図を見ると,その違いは顕著に見てとれる.PrRu 4Sb 12中のPrイオンは,幅こそ拡がっているものの,ガウス型の分布をしている.この結果はPrイオンが調和日本結晶学会誌第61巻第4号(2019)振動をしていることを示している.5.考察3つの充填スクッテルダイト化合物では,ラットリングを示す希土類イオンの核密度分布に大きな違いが得られた.格子定数はほぼ等しく,Sbの分率座標も共通であることから,希土類イオンの幾何学的な配置は等しい.PrイオンとNdイオンを比べると,Ndイオンのほうが小さいイオン半径をもつ.これはNdイオンのほうがより広い自由空間をもつことに対応する.この点はNdイオンのほうが広い振幅をもって振動していることとコンシステントだと考えられる.分布の詳細を見ると,〈100〉もしくは〈111〉方向に拡がっていることがわかった.これはSbカゴの空隙に対応しており,Sbイオンを避けるように振動していることを示している.PrOs 4Sb 12では異方性が変化しているが,その起源はまだ不明である.物性を含めて検討する必要があるだろう.241