ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No4
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日本結晶学会誌Vol61No4
グラフェン欠陥の原子電場構造解析では確かに電場強度が増強されていることがわかる.電子線照射によりグラフェン中にStone-Walse欠陥が形成されることはよく知られており,図6a~cにStone-Walse欠陥から得られた原子分解能ADF像,電場強度像および電場方向像を示す.ADF像から4つのStone-Walse欠陥が連結した構造(5-7-6-7,6-7-6-7)であることがわかる.対応する位置における電場強度を観察すると,5員環では小さく,7員環では大きくなっていることが実験により確認された.7員環では周囲よりも大きな電場が環の中心に向かって形成されているため,Stone-Walse欠陥にはカチオンの吸着が容易になると考えられる.3.5グラフェンホールの電場構造ナノサイズのホールに形成された電場構造を解析するため,2層グラフェンに形成されたナノホールの観察を行った(図6d~f).グラフェンの端は電子線照射下において不安定であるため,2層グラフェンを用いた(グラフェンモアレ,回転角は30°).25)ファセットしたグラフェン端において強い電場強度が観察され,電場はホールの中心に向かっていることがわかる.グラフェン端では電場強度がおよそ20%高くなっているが,これはダングリングボンドの形成により配位数が少なくなったことに起因している.図6dに示すADF像ではグラフェン端にトラップされた複数のSi原子が観察されているが,次のプロセスにより形成された.hollowサイト・原子空孔に吸着・置換したSi単原子に電子線照射を行うと,触媒作用により周囲のCをエッチングし,ホールが成長する.観察領域に集まってきたSi単原子はグラフェン端にトラップされ,複数のSi単原子によりホールは加速的に成長する.その際に,Si原子は電子線により真空に叩き出されない限りはグラフェン端にトラップされた状態にある.グラフェン端ではhollowサイトと同様に,ホールの中心(内側)に向かう電場が形成されており,Si単原子は一度グラフェン端にトラップされると端の外へ出ていくことができない.このように,グラフェンホール図5Stone-Walse欠陥における計算像.(Theoretical simulated images of Stone-Walse defect in monolayer graphene.)(a),(b)ADF-STEM像,(c)電場強度像,(d)電場方向像.編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.図6Stone-Walse欠陥およびグラフェンホールから得られたADF-STEM像,電場強度像,電場方向像.(ExperimentalADF and DPC-STEM images obtained from Stone-Walse defect and nanohole in graphene.)(a)~(c):Stone-Walse欠陥,(d)~(f):グラフェンホール.編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.日本結晶学会誌第61巻第4号(2019)235