ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No4
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日本結晶学会誌Vol61No4
計算化学手法を用いた結晶構造の精密化$ RunGauss%nproc=8%mem=15GB#P TEST b3lyp/6-311G** empiricaldispersion=gd3 counterpoise=2b3lyp/6-311G**0 1 0 1 0 165.983048.276969.52496167.016099.205969.59003166.029017.13598 10.29798115.142678.452988.86221116.97469 10.099448.97630115.230566.40474 10.24139168.094958.99205 10.42797167.108016.92199 11.13599168.141997.85100 11.20100118.900359.71716 10.47343117.154846.02292 11.74053118.985177.67206 11.85935169.398995.588997.74702268.364916.518047.68207269.353004.448006.973992110.237685.767408.41158218.404887.405788.297492110.156313.720347.02228267.285986.304006.84402268.274014.234016.13599267.240015.163006.07099216.481647.029916.80455218.230383.338285.52534216.398244.983685.410192図8ベンゼン二量体の分子間相互作用エネルギーの計算のためのGaussianの入力ファイル.(Input file ofGaussian for calculation of intermolecular interactionenergy of benzene dimer.)用エネルギーの計算の際にcounterpoise法で16)BSSEを補正することを示す.8行目の0 1 0 1 0 1は二量体,1つめのモノマー,2つめのモノマーのもつ電荷がそれぞれゼロでスピンが一重項であることを示す.9行目以下では原子の座標を定義している.第1カラムでは原子の種類を定義している.C,Hなどのかわりに原子番号で定義することもできる.第2~4カラムはそれぞれの原子のXYZ座標である.第5カラムはそれぞれの原子が1番目と2番目のモノマーのどちらの原子なのかを示している.Gaussianを使った分子間相互作用エネルギーの計算方法の詳細については参考文献をご覧ください.17)5.2水素結合の相互作用エネルギー水素の位置の精密化は水素結合のエネルギーの計算にもしばしば大きな影響を与える.X線結晶解析で決めた結晶中の水素の位置は大きな誤差を伴うことがある.一方,水素結合の引力の大部分は水素原子の正電荷とルイス塩基の負電荷の間の静電力が原因である.このため,水素原子の位置のわずかな変化によって水素結合の相互作用エネルギーの計算値が大きく変化することがある.水素の位置の精密化は結晶中の水素結合のエネルギーの正確な評価に不可欠である.日本結晶学会誌第61巻第4号(2019)図9水素の位置の精密化が水素結合エネルギーに与える影響.(Effect of refinement of position of hydrogenatom on calculated hydrogen bonding energy.)α-(トリフルオロメチル)乳酸の結晶中の水素結合を図9に示す.左側(XRD)は結晶構造を,右側(DFT)は周期境界条件を用いたDFT計算(Material StudioのDMol3を使用)で最適化した結晶構造を示す.18)図9にはO…H距離,O…H-O角,MP2法で計算した分子間相互作用エネルギーも示している.構造最適化により水素の位置が変化し,O…H距離が短くなっている.このため計算された相互作用エネルギーが-5.03 kcal/molから-8.37 kcal/molに変化している.結晶構造を使った計算では,水素の位置の誤差が原因で水素結合のエネルギーが著しく過小評価されている.6.まとめ本稿では分散力補正DFT法を用いた結晶構造の精密化について説明した.また,水素の位置の精密化は隣接分子の分子間相互作用エネルギーに大きな影響与え,結晶構造の精密化が重要なことも示した.周期境界条件を用いた分散力補正DFT計算を使えば,結晶中の原子の位置を精密化できる.また,分散力補正DFT計算を使えば,結晶中の隣接分子間の相互作用エネルギーも解析できる.これらの計算はパソコンでも簡単に実行できる.分散力補正DFT計算などの量子化学計算を用いた結晶構造の精密化,分子間相互作用の解析は有機結晶の構造や物性の理解に有効であり,今後さらに普及して結晶構造や種々の有機材料の研究に活用されることを期待している.文献1)A. J. Stone: J. Am. Chem. Soc. 135, 7005(2013).2)S. Tsuzuki, A. Wakisaka, T. Ono and T. Sonoda: Chem. Eur. J. 18,951(2012).3)S. Tsuzuki, T. Mandai, S. Suzuki, W. Shinoda, T. Nakamura, T.Morishita, K. Ueno, S. Seki, Y. Umebayashi, K. Dokko and M.Watanabe: Phys. Chem. Chem. Phys. 19, 18262(2017).4)S. Grimme, J. Antony, S. Ehrlich and H. Krieg: J. Chem. Phys. 132,154104(2010).5)S. Tsuzuki, K. Honda, T. Uchimaru, M. Mikami and K. Tanabe: J.229