ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No4
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日本結晶学会誌Vol61No4
ゼオライトの粉末X線構造解析と解析ソフトウェア高度化への貢献図13焼成したゼオライトYNU-5のCs補正高分解能STEM像.(Cs-corrected high-resolution STEM imageof calcined zeolite YNU-5.)3.ナノ空間化合物に向けた解析法の高度化ここからは,解析法の高度化について筆者が用いているソフトウェアや測定法の変遷を述べる.これまで数多くの未知構造を粉末X線構造解析で明らかにしてきたが,改めてソフト・ハードの技術の進歩に支えられていることを強く実感している.特に計算機と解析ソフトウェアの進歩は誰の目から見ても明らかで,スケーラビリティに優れ使いやすく快適になった.それと平行して装置の進歩も大きかった.筆者はオンデマンドで物質探索・材料開発を推進したい思いから,特性X線の粉末回折装置を愛用してきた.シンチレーションカウンターの数百倍の効率で測定できる高速検出器が出現し,ガラスキャピラリーに微少量のサンプルを詰めて測定するDebye-Scherrer光学系がラボレベルでも十分実用となり,研究を進める大きなモチベーションとなった.放射光や中性子施設の装置が素晴らしいことは筆者も経験しており言うまでもない.しかし,前述のように無機ナノ多孔体では結晶性の低いものが大半で,装置のポテンシャルを生かせるケースは少ない.貴重なマシンタイムを使って構造が解けなかったら?という思いがあった.次に複雑な構造をどう解析するかについては,最終的にはリートベルト法でどれだけ追い込めるかにつきると個人的には思っている.位相解析や指数付けを含む未知構造解析も重要であるが,粉末回折データから正確に積分強度を見積り,構造パラメータを標準偏差付きで得られるのは実質的にリートベルト法だけである.研究を始めた当時,角度分散型の粉末回折データに対応する国産プログラムは泉富士夫博士のRIETAN-97βと虎谷秀穂博士のPFLS 34)などが存在していたが,RIETANのほうがさまざまな光源に対応するなど汎用性があり非線形最小二乗法に共役方向法を装備していたため収束安定性も良かった.しかし,当時の実験室系粉末回折装置で得られるゼオライトの強度データでは,光学収差の1つであるアンブレラ効果により低角反射の回折プロ日本結晶学会誌第61巻第4号(2019)図14ゼオライトLTAの(a)RIETAN-97βと(b)RIETAN-2000によるリートベルト解析で得た残差Observedプロット.(pattern, calculated pattern, and difference pattern ofzeolite LTA obtained by Rietveld analyses using(a)RIETAN-97βand(b)RIETAN-2000.)ファイルの非対称化が著しかったためまったくフィットせず,またMFI型ゼオライトZSM-5のようなサイト数の多い構造モデルを扱うこともできなかった.そこで泉先生に改良の相談を申し出たことがきっかけとなり,RIETAN-2000 35)の開発に向けた共同作業が始まった.主な改良点をリストアップすると,1.3種類の分割型プロファイル関数の実装2.部分プロファイル緩和機能の実装3.Fingerらの非対称プロファイル関数の実装4.複合型バックグラウンド関数の実装5.複雑な構造モデルへの対応(パラメータの動的割り付け)6.最大エントロピー法(MEM)との連携機能の実装7.幾何学的パラメータ計算プログラムORFFEの拡張8.Le Bail法の実装9.局所的プロファイルフィッティング法の実装10.CIF出力機能の実装フィッティングのレベルを可能な限り高めること,そして複雑な構造モデルへの対応を第1の目標として改良を行い,途中暫定版のRIETAN-98を経て,2000年に多目的パターンフィッティングシステムとしてRIETAN-2000 35)をリリースした.これにより端的に言えば図14のようにフィッティングレベルを著しく改善することができ221