ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No2

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概要

日本結晶学会誌Vol61No2

佐々木友彰,出口裕佳,笠井秀隆,西堀英治図9ダイヤモンドの800Kの粉末回折データのフーリエ解析.(The amplitudes of(a)the cosine term and(b)the sine term for the Fourier series expansionof the sixth powder profile at 800 K.(c, top)Rawdata,(middle)the intensity fluctuation ratio fromthe average values and(bottom)the sum of thebackground counts.)図8ダイヤモンドの800 Kの粉末回折データのバックグラウンド領域の強度のヒストグラムとヒストグラム作成に使用したデータ.(Powder profiles inthe background region and intensity histograms of thebackground region at 800 K.)在することが判明した.補正法を検討した.この変化を6点周期でデータにかけ合わせてデータを補正した.図10に補正前と補正後の888Bragg反射とバックグラウンド領域の強度のヒストグラムを示す.888反射はd>0.21の範囲の禁制反射をのぞいた反射の中で最も弱い反射である.補正前は反射形状もよくわからなかったが補正後にはピークをはっきり確認できるようになったことがわかる.この補正で800 Kのデータも無事にd>0.21で解析することに成功した.温度変化を検証すると,誤差の範囲で熱振動を畳み込んだものに等しいことがわかった.今回のデータ補正法は“すべてのデータにしたほうが良いのでは?”と思われるかもしれない.今回,6種類の統計の異なるデータを見たところ発見されたのは最も統計の高いデータだけで,ほかのデータの場合はランダムノイズにうもれて補正計数を決められなかった.極端に統計精度を高めた際に見えてくるもので,通常のデータでは計数も決められないこともわかった.目安としては図10データ補正前とデータ補正後のダイヤモンドの888反射.(Powder profiles of the 888 Braggreflections for(a)the uncorrected data and(b)thecorrected data at 800 K. The insets show the intensityhistograms of the background regions.)バックグラウンドで数十万カウント以上である.最初に述べたアルミニウムのデータでも必要性を確認したが,統計精度が達しておらずまったく必要ないことがわかった.この補正は,限界を超えた弱い反射の検出などを将来的に行うなら有用と思われる.4.おわりにわれわれのグループの最近の電子密度解析にかかわる成果について書かせていただいた.どちらも最近発案してやってみた研究で,原著論文までつながってよ128日本結晶学会誌第61巻第2号(2019)