ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No2

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概要

日本結晶学会誌Vol61No2

佐々木友彰,出口裕佳,笠井秀隆,西堀英治30 K WIEN2k0.04 e/A? 30.03 e/A? 30.00 e/A? 3 0.015 e/A? 3-0.100 0.100step: 0.005 e/A? 3図5アルミニウムのstatic deformation density.(Staticdeformation densities of aluminium.)(a)-0.050 0.050step: 0.005 e/A? 3図4(a)放射光粉末回折,収束電子回折,WIEN2kによるアルミニウムの構造因子.(b)過去のさまざまな実験値による構造因子とその誤差.((a)Structurefactors of SR powder, Convergent-beam electrondiffraction, WIEN2k.(b)Structure factors of previousstudies.)P. Nakashimaの2011年の報告では,3本目以降の変調についてはまったく議論されていない.また,解析は最初の2本のみを用いて行われている.この4本目の変化は,粉末回折の結果では誤差の大きさからも有意であり,この点はWIEN2kの結果と実験の差異を示していると考えられる.この差を見つけられたことが,最終的に,この研究が2011年の研究の追試に終わることなく新しい発見につながっていく.前述したように,アルミニウムの構造因子は1990年代までの間に10報以上が単結晶,粉末,ペンデル縞干渉法などさまざまな方法で測定されている.同じようにズレを定義し誤差とともに示した.図4bにその結果を示す.この図からわかるように過去のすべての結果は収束電子回折や今回の粉末法の結果の10倍近い誤差をもち,すべての値は誤差の範囲で1.0とみなせてしまうことがわかる.これが過去の研究の結果が整合しなかった理由であり,そもそも要求される精度に実験が達していなかったことも本研究からわかった.今回発見した4本目の311反射の強度変化がもたらす電子密度の変化を明らかにするために,粉末回折と図6(a)放射光粉末回折とWIEN2kの差電子密度分布,(b)過去のさまざまな理論計算による構造因子.((a)Difference charge density between SR powderfrom WIEN2k,(b)Structure factors from theoreticalcalculations.).WIEN2kの構造因子をXD2016により解析し,電子密度分布を比較した.図5に結果をStatic Deformation Densityとして示す.Static Deformation Densityとは,独立原子モデルによる電子密度分布からの差分を示した分布であり,電子密度分布のわずかな変化を検出するのによく用いられる.両者には0.03~0.04eA-3程度の原子核位置以外のピークがみられる.なお,共有結合性の強いダイヤモンドでは,結合中点のStatic Deformation Densityのピークは,0.5 eA-3に達し,この10倍以上になる.原子位置ではない場所に見られるピークの形状に着目する.WIEN2kのピークは球状であるのに対し,粉末回折のピークは三角形型である.示すレベルを変えながらこの差に起因する変化を検出しようとしてみたが何126日本結晶学会誌第61巻第2号(2019)