ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No2

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概要

日本結晶学会誌Vol61No2

三木邦夫表1タンパク質構造データバンク(PDB)で最初に公開された登録タンパク質(1976年).(Protein structure entries firstlyreleased in Protein Data Bank in 1976.)PDB IDタンパク質名分解能著者研究機関国1MBNMyoglobin2 AWatson, KendrewMRC分子生物学研究所(ケンブリッジ)連合王国1REIImmunoglobulin2 AEpp, Lattman, Colman, Fehlhammer, Bode,Schiffer, Huber, Palmマックスプランク生化学研究所西ドイツ1SRXThioredoxin2.8 AHolmgren, Soderberg, Eklund, Brandenスウェーデン農業科学大学(ウプサラ)スウェーデン1ESTElastate2.5 ASawyer, Shotton, Campbell, Wendell,Muirhead, Watson, Diamond, Ladnerブリストル大学連合王国1FDHHaemoglobin2.5 AFrier, PerutzMRC分子生物学研究所(ケンブリッジ)連合王国155CCytochrome c5502.5 ATimkovich, Dickersonカリフォルニア工科大学アメリカ合衆国2PGKPhosphotransferase3 ABanks, Blake, Evans, Maserオックスフォード大学連合王国1CYCFerrocytochrome2.3 ATanaka, Yamane, Tsukihara, Ashida, Kakudo大阪大学日本2SBTSubtilisin2.8 ADrenth, Hol, Jansonius, Koekoekフローニンゲン大学オランダ3CNAConcanavalin A2.4 AHardman, Ainsworthアルゴンヌ国立研究所アメリカ合衆国1TIMPhosphate isomerase2.5 ABanner, Bloomer, Petsko, Phillips, Wilsonオックスフォード大学連合王国1CHGChymotrypsinogen2.5 AFreer, Kraut, Robertus, Wright, Xuongカリフォルニア大学サンディエゴ校アメリカ合衆国1HIPHiPIP2 ACarter Jr., Kraut, Freer, Xuong, Alden,Bartschカリフォルニア大学サンディエゴ校アメリカ合衆国者個人としても同博士から有機金属化学についての多くの教示を受けた.3)-6)また,有機化合物では,当時1階上の研究室に所属されていた宮田幹二博士(現在,大阪大学名誉教授)とコール酸の包接化合物を対象に構造・機能研究を行った.7),8)それまでよく研究されていたデオキシコール酸とは異なり,コール酸は包接するゲスト分子の違いによって多様な様式でホスト分子になることがわかり,7)ゲスト分子に対応するインターカレーション現象も見つかった.8)ホスト・ゲスト相互作用のさまざまな可能性を見出すことができ,予想外の新しい構造様式の発掘を楽しむことができた共同研究であった.この頃は,有機化合物や有機金属化合物の結晶構造解析もまだ専門家の領域にあって,これら一連の研究で多くの結晶学的な知識と経験を得て,得られた結晶構造に基づいて構造化学を論じた論文をトップジャーナルに掲載することができた.1980年代になってもタンパク質結晶学の研究室は限られた数しかなかったし,例えば,解析プログラム標準化に向けた整備などもあまり行われていなかった.この時代の1つの画期的なできごとは,膜タンパク質の結晶構造が初めて決定されたことであろう.筆者は,1982~83年に西ドイツ(当時)ミュンヘン近郊のマックスプランク生化学研究所で研究する機会に恵まれた.RobertHuber博士が主宰する研究室は,当時の欧米で有数の研究室で,着実な成果をあげていた(表1にも名前がある).そこでの研究テーマは,光合成細菌のクロマトフォア膜に存在する光合成反応中心複合体の結晶構造解析であった.Hartmut Michel博士が結晶化に成功した結晶を用いて,低温室に設置された回転対陰極型X線発生装置上で,回転カメラで回折を膨大な数のフィルムに記録図1膜タンパク質として初めて構造決定された光合成反応中心複合体の結晶構造.(Crystal structureof photosynthetic reaction center, the first membraneprotein structure.)9),10)紅色光合成細菌Blastochlorisviridis(当時の菌名はRhodopseudomonas viridis)由来である.4つのタンパク質サブユニットとバクテリオクロロフィルなどの多くの光合成色素からなる分子量およそ13万の複合体.編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.する(当然だがそれをすべて現像する)写真法によってデータ収集した.当時としては非常に大きな分子量の複合体であったが,重原子多重同形置換法で位相をつけることができた.筆者にとっては,初めての同形置換法であり,共同研究者のJohann Deisenhofer博士からいろいろな手ほどきを受けた.筆者の滞在中になんとか位相がついて,1984年には最初の報告を出すことができた96日本結晶学会誌第61巻第2号(2019)