ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No2

ページ
25/88

このページは 日本結晶学会誌Vol61No2 の電子ブックに掲載されている25ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol61No2

Bilbao Crystallographic Serverの入門分群関係をもたない構造の相転移の研究に役立つ情報を与える.INDEX:化合物の単位と格子定数を利用し,群と部分群の指数を決定する.この情報は,SUBGROUPGRAPHなどの別のプログラムで利用する.3.個体物性理論とその応用(Solid State Theory Applications)SOLID STATE THEORY APPLICATIONSには固体物理に役立ついくつかのプログラムが組み込まれているが,本稿で紹介した項目に直接関係しているPSEUDOを紹介する.PSEUDOはユーザーが入力する結晶構造の擬対称の有無を検索し,それを見つけたら超空間群での座標を書き直す.擬対称の判断をするためにユーザーが決める許容差が必要である.結晶構造がより高い(擬)対称性をもっていると判断するために以下の条件を満たさなければならない(Hは元の空間群,Gはその超空間群).1.Hの格子定数はGと矛盾してはいけない.HとGは同じ結晶族に属するなら格子定数への制限が変わらないのでこの条件はすでに成り立っている.しかし,HとGは別々の結晶族に属するとGの格子定数はHの格子定数に比べてより厳しく制限されている.Hの格子定数が許容差の範囲でその追加条件を満たさないと擬対称は認められない.2.群から部分群に対称性を落とすとワイコフ位置が分割するか,若しくはその席対称群が低下する.逆に群から超群に対称性を上げると2つ以上のワイコフ位置が合体するか,ワイコフ位置の席対称群が上がる.どちらかの条件が満たされなければ擬対称は認められない.図19に示すように,PSEUDOは3のオプションを提供する.1.最小超群に対する擬対称性を検索する.2.既知の指数の超並進部分群に相当する超群に対する擬対称性を検索する.3.既知の超群に対する擬対称(変換行列の入力が必要である).超群が未知の場合はオプション1を利用し,許容差が許す限り最小超群のチェインを分析する.9擬対称の検索は発表された構造の対称性の誤りがないか確認するだけではなく,新強誘電体の探索)や双晶を形10成する結晶の共通の結晶軌道の同定)などの研究に役に立つ.なお,PSEUDOに際して,空間群の標準設定しか認めない結晶構造が非標準設定で表現されている場合は入力する前に設定の変換が必要であることに注意が必要である.焦電群から出発すると原点が固定されていないため(文献3)を参照),極方向に検索グリッド(ステップ)をユーザーが入力しなければならない.そのステップが小さければ小さい程精密な擬対称性が求められる反面,計算時間は長くなる.矛盾のない最小超空間群を見つけたら,さらに最小超空間群を検索することができる.この検索過程は許容差を超えるまで一段階ずつ進む.図19 PSEUDOのインプット画面(構造データ入力枠を省略)日本結晶学会誌第61巻第2号(2019)91