ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No2

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概要

日本結晶学会誌Vol61No2

Bilbao Crystallographic Serverの入門図10 Immm空間群タイプのa=bの場合の正規化群図9に,Immm空間群タイプ(第71番)の一般正規化群の表示例を示す.正規化群は同じ直方(斜方)晶系に属するが,空間群の基底ベクトルに比べて正規化群の並進ベクトルはそれぞれ半分である.Immmの体心ベクトルI(?,?,?)は,正規化群の並進ベクトルの1つに過ぎないので正規化群はPmmmタイプとなる.Immmに対する追加生成元は?,0,0および0,?,0という2つの並進操作である.残りの0,0,?並進操作はこれらと元々のI(?,?,?)の組み合わせで現れる.例えば,図10に示されるようにa=bを入力すると,正規化群は正方晶系に上昇する.オプション2を選択すると一般正規化群とユーザーによって入力されたspecialized metricに相当する正規化群が表示される.追加生成元は前述の並進操作のほかに[001]方向に対する4回回転操作も存在する.この生成元はP4/mmmをPmmmにおける剰余類で分析を行った場合の剰余類の代表なので同じ剰余類に属する別の操作を生成元として選択することも可能である.最後にオプション3を選択した場合に表示される,最も対称性の高いアフィン正規化群に関する出力例を図11に示す.本稿に示すImmm空間群タイプの場合は,3つのオプションはすべて異なる正規化群に相当するが,空間群タイプによって必ずしも同様な結果になると限らない.追加生成元は上記の並進操作のほかに[111]方向に対する3回回転操作および[11 _ 0]に垂直な面に対する鏡映操作が表示されている.これらも剰余類の代表なので同じ剰余類に属する別の操作を追加生成元として選択することも可能である.SYMMETRY OPERATIONS:本プログラムはユーザーが入力した操作の性質を分析する.文献2)で紹介した行列・ベクトルペアの分析方法によって対称操作を同定することができる.ユーザーからはx,y,z式あるいは行列・ベクトル式の入力が求められる.晶系や空間群タイプの追加入力もできるが,これらの情報は操作の同定にどうしても必要な訳ではない.プロググラムは,入力した操作からその対称要素を分析し,ブラベー格子の対称方向と矛盾を見つけるとエラーを表示する.なお,GENPOSと同様にITA SettingとNon-standard settingというオプションがあり,標準設定からの変換行列を入力すればどの設定でも利用できる.IDENTIFY GROUP:最近追加されたプログラムである.生成元(と思われる)操作を入力すればその空間群が同定される.しかも標準設定と限らないので一見で判断しにくい空間群タイプも簡単に同定できる.図12にその1つの例を示す.恒等操作x,y,zのほかに_ x+?,y _+?,z+?という操作が生成元だとする.この操作はどの空間群にも属日本結晶学会誌第61巻第2号(2019)87