ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No2
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日本結晶学会誌Vol61No2
横田紘子図1SHG二次元画像.(2D images of SHG distributions.)(a)CaTiO 3,(b)LaAlO 3.色の明るい領域からSH波が発生していることを表している.図2Pb 3(PO 4)2のSHG三次元画像.(3D image of SHGdistribution from Pb 3(PO 4)2.)図1aに見てとれるようにいずれのドメイン境界もSH活性であった.ドメインは中心対称性を有しているため,SH非活性であるが,図1においてもそのことを反映するようにドメインからはSH波が発生していない.異なる試料深さにおいて二次元測定を行い,三次元画像を構築することにより図2に示すようにSH活性は試料内部においても保たれていることが見てとれる.ドメイン境界におけるSH活性はバルクとは異なる対称性を有することを示唆していると言えるため,ドメイン境界自身の対称性を明らかにすることを目的に偏光依存性測定を行った.図3にLaAlO 3における偏光依存性測定の結果を示す.ドメインからはどの偏光方向においてもSH波が発生してないことがわかる.ドメイン境界においては,ドメイン境界にほぼ垂直な方向に最大値をもつ明瞭な異方性を示していることが見てとれる.この異方性をいくつかの点群を仮定し,解析を行った結果,LaAlO 3のドメイン境界は点群3mの場合に最も良く実験結果を再現できることがわかった.点群3mは極性点群に属することから,LaAlO 3の強弾性ドメイン境界は極性を有すると結論付けることができる.同様な解析をほかの物質についても行ったところ,いずれの場合にも強弾性ドメイン境界は極性点群に属することが明らかとなった.ドメイン境界における極性発現の起因としてflexoelectric効果が考えられているが,12)その場合にはドメイン境界に平行もしくは垂直な分極しか許容されない.LaAlO 3の場合にはどちらの成分も有していることからflexoelectric効果のみで極性の発現を解釈することはできない.このことは,酸素多面体の回転に伴う四次の結合項の存在が重要であることを示唆している.ドメイン境界において発現する物性や構造に関しては研究が端緒についたばかりである.今後の研究により,特異な物性発現の起因解明とこれらのデバイスへの応用が期待される.図3LaAlO3におけるSH強度の偏光依存性.(Polarizationdependences of SH intensity on LaAlO 3.)(a)ドメイン境界,(b)ドメイン.点が実験結果,実線が解析結果.文献1)Y. Kim, M. Alexe and E. K. H. Salje: Appl. Phys. Lett. 96, 032904(2010).2)S. Y. Yang, J. Seidel, S. J. Byrnes, P. Shafer, C. -H. Yang, M. D.Rossell, P. Yu, Y. -H. Chu, J. F. Scott, J. W. Ager, L. W. Martin andR. Ramesh: Nat. Nanotechnol. 5, 143(2010).3)J. F. Scott, E. K. H. Salje and M. A. Carpenter: Phys. Rev. Lett. 109,187601(2012).4)E. K. H. Salje, O. Aktas, M. A. Carpenter, V. V. Laguta and J. F.Scott: Phys. Rev. Lett. 111, 247603(2013).5)S. Van Aert, S. Turner, R. Delville, D. Schryvers, G. Van Tendelooand E. K. H. Salje: Adv. Mater. 24, 523(2012).6)C. -L. Jia, S. -B. Mi, K. Urban, I. Vrejoiu, M. Alexe and D. Hesse:Nat. Mater. 7, 57(2008).7)D. Lee, R. K. Behera, P. Wu, H. Xu, Y. L. Li, S. B. Sinnott, S. R.Phillpot, L. Q. Chen and V. Gopalan: Phys. Rev. B 80, 060120(2009).8)D. Lee, H. Xu, V. Dierolf, V. Gopalan and S. R. Phillpot: Phys. Rev.B 82, 014104(2010).9)L. Goncalves-Ferreira, S. A. T. Redfem, E. Artacho and E. K. H.Salje: Phys. Rev. Lett. 101, 097602(2008).10)H. Yokota, H. Usami, R. Haumont, P. Hicher, J. Kaneshiro, E. K. H.Salje and Y. Uesu: Phys. Rev. B 89, 144109(2014).11)H. Yokota, S. Niki, R. Haumont, P. Hicher and Y. Uesu: AIP Adv. 7,085315(2017).12)H. Yokota, S. Matsumoto, E. K. H. Salje and Y. Uesu: Phys. Rev. B98, 104105(2018).78日本結晶学会誌第61巻第2号(2019)