ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No1
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日本結晶学会誌Vol61No1
AsCA2018会議参加記オーラルセッションにおける発表最終日の10:45~12:45に行われたオーラルセッションMS#18「Novel applications of Crystallography」において,20分間の発表の機会をいただいた.放射光を用いたナノ粒子合成のその場観察研究の進捗を報告した.最終日のためか,想定していたよりも聴衆の人数は少なかった.外国人の聴衆を前にして英語でプレゼンを行う初めての機会であり,非常に緊張した.一方で当日になって発表者が1人欠席したため,時間を長めに使ってゆっくりと発表することができた.発表終了後,別のオーラルセッションでその場観察研究の発表を行っていたM.Rowles博士から結果の評価方法についてコメントをいただいた.専門家と議論ができる貴重な機会であったのだが,内容をよく理解できず,有意義な意見交換にできなかったことが悔やまれた.当たり前のことであるが,自分の研究内容をよく理解して,たとえ英語であっても適切に発信できるようにしておくことの重要さを身に染みて実感することができた.おわりにAsCA2018では最先端の研究に触れて見聞を広めるだけでなく,オーラルセッションでの発表という貴重な経験を積むことができた.研究内容から発表の仕方まで,内容や気づきを片端から手元のノートに書き込み,学びの多い4日間を過ごすことができて幸せであった.IUCrYoung Scientists Awardsを受賞し,自分の研究を評価していただいたことも今後に向けての励みとなった.今回はCoffee Breakや食事の時間の多くは日本人の参加者と過ごしてしまったが,周囲の参加者が学生・先生問わず積極的に交流し,国を超えてお互いに対する理解を深めていたことを思い出すと,もったいなかったと思う.次に国際会議に参加する機会があれば,新しい機会やつながりを積極的に作りたい.最後になりましたが,本会議は日本結晶学会国際会議参加助成プログラムのご支援の下で参加させていただきました.プログラムのご支援先である㈱リガクならびに日本結晶学会の皆様に,この場を借りて厚くお礼申し上げます.AsCA2018参加報告(国研)物質・材料研究機構シンクロトロンX線グループ廣井慧はじめに筆者は日本結晶学会2018年度国際学会参加助成を受ける機会をいただき,2018年12月2日~5日に開催されたアジア結晶学会(AsCA2018)に参加致しました.当初は口頭講演を希望しましたが叶わず,ポスターセッションでの研究発表となりましたが,講演を聞きに来てくださった方々と細部まで議論でき,確かな手応えを感じることができました.日本結晶学会誌第61巻第1号(2019)筆者は長らく,アモルファス材料や液体試料などの構造不規則系の原子構造および物性基礎を専門として研究活動を行ってきました.そうした背景もあり,紹介した研究手法が結晶学の研究者に受け入れられるのか不安でしたが,その構造不規則系の解析手法は珍しく映ったようで,大勢の方々の興味を惹くことができました.また,ほかの研究者の発表を効率良く聞くことができ,近年の結晶学研究のトレンドや方向性を理解する良い機会となりました.AsCA2018AsCA2018は,ニュージーランド北島の都市オークランド市街地にあるオークランド工科大学にて開催されました.口頭講演(keynote,plenary talk含む)は124件,ポスター講演は244件(双方ともプログラムを参照)であり,大変盛り上がっていたような印象を受けました.一般の口頭講演は3会場のparallel形式で行われましたが,いずれも分野の重複が最小限となるよう配慮されており,どのセッションに参加すべきか決めかねることは少なく感じました.会場は十分な広さが確保され,立ち見の必要もなく集中して講演を聞くことができました.ポスターセッションでは,軽食を摘みながらゆったりとした雰囲気の中で議論することができました.関西国際空港からオークランド空港へは直行便が就航しており,西日本からのアクセスは比較的容易です.空港と市街地の間にはリムジンバスが発着しており,難なく宿泊先へと到着することができました.会場のオークランド工科大学周辺は各国のテイストを味わえるレストランが多数見られ,和食・中華・インド料理など,好みの味から選ぶことができました.オーラルセッション2日目から3日目にかけて,一般講演が行われました.講演は質問時間込みで15~25分程度の時間でした.筆者はMS#3:Novel synchrotron and neutron applicationセッションにおけるDavid Keen教授のX線・中性子全散乱の解析手法に注目しました.氏は結晶・非晶質の局所構造解析手法を行うソフトウェア“RMCprofile”の開発者であり,その応用などについての紹介をされていました.Reverse Monte Carlo(RMC)は全散乱やEXAFSによる局所構造情報を手がかりとして三次元原子座標を導出する方法であり,構造不規則系の原子配置や結晶に含まれる崩れを描写する方法です.本来,結晶というと精密化された結晶モデルで説明できるものと思われがちですが,現実の材料では局所的な欠陥や崩れ,歪みが含まれていることがよくあります.RMCprofileでは粉末X線回折と全散乱などの構造情報を組み合わせ,結晶構造の精密化を達成しつつも局所的な原子の乱れを含むような三次元構造モデルを構築します.電池材料や超イオン伝導体などの特性を局所構造から理解するための方法として,61