ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No1
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日本結晶学会誌Vol61No1
談話室手法が普及していくことを予感させた.ポスター発表では250以上のポスターが2日に分けて張り出された.私は2日目(12/3)に発表を行った.慣れない英語に苦戦しながらもなんとか10名程度のお客さんに説明できた.海外での学会に参加するのは今回が2回目だが,前に比べて多くの方が聞きにきてくれたのでそれだけでうれしかった.また,光栄なことにポスター賞(PDBj賞)をとることができた.PDBj賞は今年から新設された賞のようで副賞としてBLUNDELLとJOHNSONが43年前に執筆した“Protein crystallography”(なんとBLUNDELL本人のサイン入りのもの!)をいただいた.このような歴史的にも価値のある著書をいただき責任を感じるとともに,これを今後のモチベーションとして構造生物学のさらなる発展に貢献できたらいいなと思った.最後に今回のAsCAの参加にあたっては,日本結晶学会より参加助成をいただきました.このような貴重な機会を提供くださりましてありがとうございました.ご支援いただきました日本結晶学会ならびに関係者の皆様方に厚くお礼申し上げます.AsCA2018参加報告筑波大学数理物質科学研究科藤田知樹はじめに2018年12月2日から5日にかけてニュージーランドのオークランド大学で開催されたAsCA2018/CRYSTAL 32の合同会議に参加した.オークランドは,高さ328 mのスカイタワーを中心部にもつニュージーランド最大の都市である.折しも現地は初夏であり,道端に咲いた紫陽花が印象的であった.到着初日は毎年恒例のサンタパレードの開催日であり,街中にはアジア系を中心に観光客が多く見られた.時々日本語も聞こえるため,外国に来たという実感がなかなか湧かなかった.会議の会場は,オークランド大学のSir Owen G. Glenn Buildingであった.初日のシンポジウム,初日と2日目のポスターセッション,2日目から最終日まで行われたオーラルセッションに参加した.最終日のオーラルセッションで,研究発表を行った.余談であるが,初日は気温が20℃と暖かく,半袖で会場入りしたところ,あまりの冷房のきつさに最初のシンポジウムで唇が紫色になり,宿舎に上着を取りに戻る羽目になってしまった.会議の感想と印象に残った講演AsCA2018/CRYSTAL 32では,セッション全体を通して,新しい結晶学の手法に対して惜しみなく時間が割り当てられていた.クライオ電子顕微鏡をテーマとしたオーラルセッションだけで2つ存在し,分野に対する注目度の高さと発展の著しさを感じることができた.X線自由電子レーザーの分野では,SACLA,LCLSおよびEuroXFELにおける最新の結果が報告された.特にシリアルフェムト秒X線結晶学(SFX)について,粉末試料を用いた新しい構造解析技術の進展が報告されていた.嬉しかったことは,私の研究分野であるその場観察の研究がいくつも報告されていたことである.オーラル・ポスターセッションともに,4日間を通じて退屈するということはいっさいなかった.会議を通じて最も印象的だった講演は,3日目に行われたJ. Park博士による液相透過型電子顕微鏡(Liquidphase TEM)を用いたナノ粒子のその場観察研究である.グラフェンのシート間に挟んだ溶液中の微細粒子に電子線を当て,数nmのナノ粒子1個について三次元の原子配列の再構成に成功していた.結果の鮮やかさはもちろん,高真空が必要なTEMで液体を利用する技術や測定のアイディアに感銘を受けた.Park博士の英語のプレゼンが巧みであったことも印象的であった.会場前にて発表後の写真撮影60日本結晶学会誌第61巻第1号(2019)