ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No1

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概要

日本結晶学会誌Vol61No1

AsCA2018会議参加記最新の成果に触れ,充実したディスカッションができ,同年代の国内外の学生の方と親しくなることもできました.この場をお借りしてご支援くださいましたリガクファンド,日本結晶学会2018年度国際会議参加助成の関係者の皆様に心より感謝を申し上げます.AsCA2018 Auckland参加報告書東京大学大学院薬学系研究科清水光ニュージーランドの北島に位置するオークランドのオークランド大学で12月2~5日にかけて第32回AsCA2018が開催された.現地の気温は20℃前後と過ごしやすい一方で,天候は変わりやすく頻繁に俄雨が降っていた.私にとっては初のオセアニアへの渡航であり,勝手がわからず多くの服をスーツケースに詰め込んでしまったが,結果的にはシャツと薄手のコートで十分といった具合であった.オークランドの街は活気に溢れ,新鮮な魚介類や肉,乳製品を食べることのできる実にグルメな街であった.オープニングセレモニーに先立って4つのワークショップが開催された.私はLipidic cubic phase(LCP)workshopに参加した.参加者は演者も含めて30人程度と比較的小規模でお菓子もふるまわれながらアットホームな雰囲気で行われた.7人の演者によるLCP法の概略やケーススタディおよびLCP法により得られた結晶をシンクロトロンやXFELでどのように扱いX線を当てるか,そのための試料調製方法などの説明がなされた.また午後の部では実際にLCP作製と結晶化ロボットによる結晶化の体験をした.参加者のほとんどはLCP法初心者であり,私もその一人だったが親切丁寧な実演をしていただき,紙面に書かれるプロトコルでは表現できない手技の注意点やコツを教えていただいた.オープニングセレモニーでは各国からの参加者数が発表され,日本からはニュージーランド,オーストラリアといったオセアニア諸国に次いで約90名が参加しているようであった.アジア各国からの参加者と比較的少数であるが欧米からの参加者もおり国際性豊かな会であると感じた.会期中はパラレルに3つのMSセッションが開催された.構造生物学の分野では膜タンパク質の構造解析や近年目覚ましい進歩を遂げたcryo-EMやXFELについてなど多くのセッションが開かれ,どのMSに出席するかおおいに迷った.私が注目した発表は米国UCLAのTamir Gonen氏によるmicroEDについての講演であった(Gonen氏はオークランド大学出身).プレゼンは単粒子解析の成果によって世界に名を轟かせるTitan Krios(Thermo FisherScientific社)のフロント面には回折点を模したロゴが印刷されており,この装置は本来結晶構造解析のための装日本結晶学会誌第61巻第1号(2019)置である,という軽快なジョークから始まった.通常のX線回折実験では考えられないナノメートルオーダーの微小結晶から構造解析を実現するmicroEDの強力な手法を解説し,現在どこまで取り組みが進んでいるのかについて説明した.電子線散乱の永遠の課題である薄い結晶の作製について,彼らの実験グループでは大きな結晶を破砕するという実に大胆かつシンプルな方法をとっていた.また,最近ではレーザーによって結晶を削り薄膜状にしたうえで回折像を取得するといったよりソリッドな方法もあるようだ.microEDに使用可能なナノ結晶は一見granular milky solutionに見えるような結晶化溶液内にも析出している場合があるということなので驚きであった.これまで本手法で構造解析された分子の例ではペプチドなどの比較的小さな構造体が多い印象であったが,膜タンパク質でも1例(PDBID:6CPV)構造解析がなされており,広範囲に適用可能なように思われた.Gonen氏の講演に対する注目度は高く,活発な質疑が行われた.各国の構造生物学者らからLCP法により得た結晶についても適用可能か,新規構造の位相決定をどのようにするかなどクリティカルな質問がなされた.Gonen氏はどの質問にも前向きな返答をしており,これから本ポスター賞ゲット!副賞の本とPDBj特製トートバッグ59