ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No1

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概要

日本結晶学会誌Vol61No1

今井康彦,隅谷和嗣,木村滋に示す.この結果から数十μmの領域でInGaN結晶の格子傾斜が存在し,局所的に傾斜が変化していることが明らかとなった.4.2埋め込みGe 1-xSn x/Ge微細構造内部の局所歪評価12,13)CMOSデバイスの省電力化と性能向上のためには,微細化だけではなく,新しい技術が必要となっている.その技術の1つに,高移動度チャネル材料と歪技術を合わせた歪Geチャネルがある.特に,高い正孔移動度が得られる一軸圧縮歪Geにおいて,チャネル領域への歪印加のための局所応力印加源としてGeより格子定数の大きなGe 1-xSn xの利用が提案されている.平面基板上のGe 1-xSn x薄膜の結晶成長については報告が増えている一方で,立体的な局所領域への結晶成長,埋め込みGS/Ge図6図5のInGaNの回折ピーク位置にω値を固定して測定した強度の場所依存性. 12)(Beam positiondependence of the InGaN 22 ? 00 Bragg peak intensityat a fixed omega that gives the intensity maximum inFig. 6.)構造内部の局所歪および結晶構造に関しては世界でもほとんど報告例がない.チャネル歪制御のためには,局所領域における歪分布や結晶構造の解明は不可欠である.そこで,サブミクロンオーダーの空間分解能を有し,かつ直接的に歪構造を観察できる放射光ナノビームX線回折法を用いて,埋め込みGS/Ge構造内部の局所歪分布を調べた.Ge(001)基板表面に細線状のSiO 2層を形成後,化学エッチングによりパターニング基板(Ge細線幅/ピッチ=25~60/500 nm,リセス深さ130 nm)を作製した.化学洗浄および超高真空中熱処理により表面清浄化した基板上に,固体ソースMBE法を用いて基板温度150℃においてSn組成2.9~6.5%,膜厚120~130 nmの埋め込みGe 1-xSn x層を形成した.作製試料に対して,380×260 nm 2~820×260 nm 2の領域に集光したエネルギー8 keVの放射光X線を照射し,回折測定を行った.図7には,25~60 nmそれぞれの細線を横切るように50 nmステップでナノビームX線を走査して得たGe 004およびGeSn 004 Bragg反射の回折プロファイルを示す.無歪のGe基板および埋め込みGeSn回折ピークに加えて,Ge細線に印加される局所歪を反映した回折ピークが見られる.細線幅の縮小に伴い,歪量増大の方向に歪Geピーク位置がシフトする様子が観察された.ピーク位置から,基板面直方向の平均伸張歪量は細線幅60 nmから25 nmにおいてそれぞれ0.46%,0.68%,0.83%と推移し,面内一軸歪を仮定した場合はそれぞれ1.2%,1.8%,2.2%の圧縮歪が印加されていると見積もられた.これは,マイクロ回折測定がナノメートルオーダー領域の局所歪評価において有力な手法であることを示すとともに,GeSnローカルストレッサの導入によりGeに局所歪が印加されることを実証した.図7細線幅60~25 nmのそれぞれの細線を横切るように50 nmステップでX線ナノビームを走査して得たGe 004およびGeSn 004 Bragg反射の回折プロファイル. 12)(Ge 004 and GeSn 004 Bragg diffraction profiles as a function ofthe nanobeam position scanned with 50 nm step for Ge widths of 60~25 nm.)54日本結晶学会誌第61巻第1号(2019)