ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No1
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日本結晶学会誌Vol61No1
石丸学,仲村龍介態図の固溶限以上のSnをGe中に導入する試みがなされている.九州大学のグループは,レーザーによる局所アニールにより180℃で約10 at.%SnのGeSnの高速成長に成功している.12)また,筑波大学のグループはアモルファスGe薄膜にSnを堆積した2層膜を70℃で100時間熱処理することにより,25 at.%SnのGeSnを実現している.13)われわれは,非熱的過程により材料改質が可能な電子線照射を用いて,スパッタリング法により作製したアモルファスGeSnの結晶化を試みた.14)スパッタリングに際してはGeターゲット上にSnチップ(5 mm×5 mm)を置き,チップ枚数を変化することによりSn濃度を制御した.その結果,10~40 at.%SnのアモルファスGeSnが得られ,顕著な結晶や相分離が存在しないことが電子回折実験および高分解能像観察により確認された.14)アモルファスのより詳細な構造情報を得るため,回折強度I(Q)を定量解析することにより電子線動径分布解析を行った.15)-18)図1aは,16.4 at.Sn試料の電子回折図形から得られた干渉関数i(Q)=<I(Q)-N<f(Q)>2―――――――――に散乱N<f(Q)>2=―2πdを掛けた還元干渉関数F(Q)=Qi(Q)である.ここで,Nは全原子数,f(Q)は原子散乱因子,λは電子線の波長である.強度に散乱ベクトルが掛けられているため高角度側の強度が強調されており,Q=320 nm-1まで十分な強度振動が見られる.Qi(Q)をベクトルQ=4πsinθ―――λフーリエ変換することにより還元動径分布関数G(r)=π∞―2∫0 w(Q)Qi(Q)sin(Qr)dQを得た.ここで,rは実格子空間における距離である.w(Q)は有限の積分区間内で強度が滑らかに0になるようにするための窓関数で,ここ――――――では1+exp(1Q-a――b)(a,bは定数)とした.得られたG(r)ではrが大きくなると0に収斂しており,長距離秩序がないことを示している(図1b).第1および第2ピークは,それぞれ0.25および0.40 nmに存在し,ダイヤモンド型構造を有する結晶Geの原子間距離と一致する.一方,第3原子間距離(0.47 nm)に相当する位置にはピークが存在せ19)-22ず,アモルファスIV族半導体の特徴)を再現している.図1bに挿入図として第1ピークの拡大図を示しているが,長距離側に肩が存在することがわかる.この肩はダイヤモンド型構造のGe-Sn原子対の結合長(0.263 nm)と一致する.このことは,第1隣接においてGeとSnが混合していることを示唆している.図2aは,20.0 at.%SnのアモルファスGeSnに電子線を照射した後の電子回折図形である.ハローリングはデバイシェラーリングに変化しており,照射により結晶化が誘起されていることがわかる.出現したリングは内側からダイヤモンド型構造の111,220,311反射で指数付けでき,それ以外の反射は存在しない.すなわち,Ge結晶の置換サイトにSnが取り込まれている.一方,40.2 at.%Sn試料においてもダイヤモンド型構造によるリングが出現するが,その直径は図2aのものより小さくなって図1スパッタリング試料から得られた(a)還元干渉関数F(Q)および(b)還元動径分布関数G(r).((a)Reduced interference function and(b)reduced radialdistribution function obtained from the as-sputteredamorphous GeSn.)(b)の挿入図は第1ピークの拡大図で,実線はGe-Ge(0.245 nm),破線はGe-Sn(0.263 nm),一点鎖線はSn-Sn(0.281 nm)の第1原子間距離である.エネルギー分散型X線分光法により見積もったSn濃度は16.4 at.%である.図2電子線照射により結晶化したGeSnから得られた電子回折図形.(Electron diffraction patterns of GeSncrystallized by electron-beam irradiation.)エネルギー分散型X線分光法により見積もった照射前のアモルファスGeSnの組成は(a)20.0 at.%Snおよび(b)40.2 at.%Snである.デバイシェラーリングはダイヤモンド型構造により指数付けできる.30日本結晶学会誌第61巻第1号(2019)