ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No1
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日本結晶学会誌Vol61No1
羽田真毅図5時間分解電子線回折実験の解析結果.(Time-resolved electron diffraction.)(A)電子線回折の時間発展(-120,0,+120,+240,+360 ps):黒い矢印は変化の生じている部分を示す.下図に水分子モデルを示す.電子線回折図形の青および赤矢印で示された部分は,水分子モデルに示されたそれぞれの結合に対応する.(B)Q=0.20 A-1のピークシフトの時間発展(C)差分電子線回折図形(-120,0,+120,+240,+360 ps)(D)Q=0.19, 0.23, 0.35~0.52 A-1のピーク強度変化の時間発展(E)Q=0.20 A-1のピークシフト量の入射フルーエンス依存性Adapted with permission from J. Phys. Chem. A 122, 9579(2018).7)Copyright(2018)American Chemical Society.編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.を示している.ただし,回折のピークシフトから考えると全体的には広がっていることがわかる.つまり,図5Aで観察されたピークシフトおよび強度変調は,アモルファス状態の水分子が光励起により秩序を失っていることを示している.この結果は,時間分解X線回折法によって観察された水分子の無秩序化の結果とよく一致している.31)図5Eは,Q値が0.2 A-1のピークのシフト量の入射フルーエンス依存性を示す.水に対する波長400 nmの近紫外光の吸光度は非常に低い(<1×10-2 m-1)ことが知られている.46)一般にn光子過程では,変化量は,光の強度のn乗に比例することが知られており,図5Eからピークシフト量は入射フルーエンスの2.45乗に比例しているため,これは2光子あるいは3光子吸収過程が支配的であることがわかる.図5A,C,Dに示されるように,Q値が0.35~0.50 A-1のピークは,強度変調もピークシフトも示さないことがわかった.この現象を理解するために,水のポテンシャルエネルギー曲面を考える(図6A).水の光解離において2つの補完的なプロセスが提案されている.47)すなわち光励起と光イオン化である.光励起と光イオン化に必要なエネルギーはそれぞれ6~8 eVと11~12 eVである.入射光のエネルギーは3.1 eV(400 nm)であり,水分子に2~3図6本実験から得られた水の構造ダイナミクス.(Structural dynamics of water molecules.)48(A)水のポテンシャルエネルギー曲線)の概略図と入射光のエネルギーとの関係(B)本研究で観測した水のダイナミクスの概略図Reprinted with permission from J. Phys. Chem. A 122,9579(2018).7)Copyright(2018)American ChemicalSociety.26日本結晶学会誌第61巻第1号(2019)