ブックタイトル日本結晶学会誌Vol61No1
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日本結晶学会誌Vol61No1
寺内正己図3(a)Siウエハから測定したL 2,3発光スペクトル.スペクトル強度分布の右端(矢印)は,価電子帯上端に対応.(b)第一原理計算(WIEN2k)で得たSi-Siの結合電子のエネルギー状態分布(Densityof states:DOS)を成分ごとに分解して表示.s,p,dは,それぞれ3s,3p,3d電子軌道成分のエネルギー分布を示す.7)((a)Si L 2,3-emission spectrumobtained from a Si wafer.(b)Calculated density ofstate of Si by WIEN2k code. s, p, d show energydistribution of 3s, 3p, 3d component, respectively. 7))成分の結合電子のエネルギー分布に対応し,p(l=1)成分は観察されない.実験データの2つのピークの間隔および価電子帯上端(矢印)からのエネルギー位置は,理論計算DOSのs成分とよく対応する.また,価電子帯上部に対応する強度分布は,理論計算のs成分よりもs+d(点線)のほうが特徴を再現している.図3bの計算結果は基底状態に対するものであり,厳密な意味では実験スペクトルに対応しない.なぜなら,SXESスペクトルには,発光過程の途中での電子移動が生じうることや,発光の終状態が基底状態とは異なる(価電子帯にホールが存在する)からである.しかしながら,図3を見てわかるようにおおまかな特徴が比較できる.これは,Si-L 2,3発光の終状態(価電子帯にホールが存在)が,基底状態に比べてエネルギー的に大きくかけ離れていないことによる.これに対し,EELSの内殻励起スペクトルの理論計算には,強い内殻ホール効果を考慮することが本質的に重要となる.図4Alとその金属間化合物であるAlCo,AlPd,Al2PtおよびAl 2AuのAl-L 2,3発光スペクトル.(Al L 2,3-emission spectra of Al, AlCo, AlPd, Al 2Pt, and Al 2Au.)Alのスペクトルの右端は,最高占有準位であるフェルミエネルギー(EF)位置に対応する.金属間化合物では,Alの価電子と遷移金属のd電子軌道との混成により,スぺクトル強度分布が変化している.また,構造による類似性も観察される.4.測定例図4に,われわれオリジナルのSEM-SXES装置を用いて測定した,アルミニウム(Al)とその金属間化合物であるAlCo,AlPd,Al 2Pt,Al 2AuのAl-L 2,3発光スペクトルを示す.Al-L発光強度以外に,Co-MM発光(AlCo),Au-NO発光(Al 2Au)も見えている.Alのスペクトルを見ると,スペクトル強度の右端が急激に変化しているのがわかる.この部分がフェルミエネルギー(EF)準位に対応する最高占有準位である.スペクトル強度の左端が価電子帯の底に対応しており,自由電子的な状態密度分布の形をしている.金属間化合物のスぺクトル形状はAl(面心立方構造)のそれとは異なる一方,CsCl型構造を有するAlCoとAlPd,また,CaF 2型構造を有するAl 2PtとAl 2Auは互いに似た強度分布を示している.AlCoとAlPdの価電子帯の中央付近の特徴的な強度分布は,Alの価電子とCo-3d(AlCo),Pd-4d(AlPd)の混成の結果と思われる.Al 2PtとAl 2Auのスペクトルの特徴的な強度分布は,価電子帯中央より少し低エネルギー側に現れている.これらは,Alの価電子とPt-5d(Al 2Pt),Au-5d(Al 2Au)の混成の結果と思われる.この混成効果は,Al 2PtよりもAl 2Auのほうが低エネルギー側に位置する.これは,Pt-5d軌道よりもAu-5d軌道のエネルギーが低いことに起因する(原子番号Zの違い)と解釈される.図5aに,アモルファス窒化カーボン膜(a-CNx)から測定したC-K発光スペクトル(二次回折光,C-K(2),K発光エネルギーの1/2のエネルギー位置)を示す.N-K4日本結晶学会誌第61巻第1号(2019)