ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No4

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概要

日本結晶学会誌Vol60No4

黒田玲子いる項も除去できることを考慮に入れると,50 kHzに調節されたロックインアンプで検出されるシグナルは前出の式(1)となる.詳しくは文献3)を参照いただきたい.同様にして,ロックインアンプにより検出される光電流の100 kHz成分はSignal 100 kHz=G2(P x2+P y2)(LD′sin2θ-LDcos2θ)+G 2((P x2-P y2)sin2a{-CB+1/2(LD 2+LB 2-LD′2-LB′2)sin4θ+(LD′LD+LB′LB)cos4θ}(3)ここでG 2は100 kHzにおける分光計の感度に関する装置定数である.サンプルとPMの間にPEMと同じ45°の光軸で検光子Aを挿入した場合,ミューラー行列計算からPMで検出される光の強度I dはId=D?・A?・S?・M?・P?・I?0で,上と同様の扱いでSignal 50 kHz=G3{CD+1/2(LD′LB-LDLB′)-LBcos2θ+LB′sin2θ}(4)子を入れSignal 100 kHzの試料回転角依存スペクトルを測定すると,式(5)から明らかなようにシグナルがcos2θで変化すればLD>LB,sin4θで変化すればLD≪LBであることが示される.測定法の詳細は文献3)を参照していただきたい.検光子をいれ,試料を回転しながらLBの試料回転角依存スペクトルを測定し,LB maxの位置を決める.そこから45°回転した位置ではLB=0,LB′=LB′maxとなるので,この位置でCDスペクトルを測ると,[appCD]face=G1{(Px2+Py2)[CD-1/2LDLB′]+(P x2-P y2)(sin2aLB′)}(6)試料の表裏を反転して波長スキャンをすると[appCD]back=G1{(P x2+P y2)[CD+1/2LDLB′](P x2-P y2)sin2aLB′}(7)(6)と(7)を平均すると真のCDが得られる.(a)G 3は,検光子を挿入したときの50 kHzにおける分光計の感度に関する装置定数である.Aは検光子のミューラー行列を表す.また100 kHzシグナルも同様にしてSignal 100 kHz=G4{-LD′sin2θ+LDcos2θ+CB-1/2(LD 2+LB 2-LD′2-LB′2)sin4θ-(LDLD′+LBLB′)cos4θ(5)G 4は,検光子を挿入したときの100 kHzにおける分光計の感度に関する装置定数である.式(1)が通常CD,式(3)がLD,式(4)がLB,式(5)がCBとして通常,観測に使われる信号である.3.2.2 UCS-1測定法の開発固体サンプルのように大きなLB,LDが共存しているCD,CBを測定するためには,必要な信号のみを取り出し余分の項を消すことができる測定・解析方法が必要である.本稿では,CD測定についてのみ説明する.式(1)には,試料の回転に依存するθを含む項と含まない項がある.過去に,「試料を光の進行方向に垂直な面内で種々の角度に回転させてスペクトル測定を行い,それらを平均化すれば真のCDが得られる」という間違った記11述をした報文)があり,多くの研究がこの方法を踏襲して誤ったスペクトルを報じる結果となってしまった.しかし,回転に依存しない項があるので,これは正しくない.われわれの測定法は,まず,吸収波長で試料を回転させてスペクトル(回転角依存スペクトル)を測定することで,LDとPEMの残留ひずみとのカップリング,PMの偏光特性とLBとのカップリングに起因する見かけのCD成分が存在するかを確認する.もちろん,サンプルが不均一であっても回転により値が変化するが,その場合には下記による補正はできない.試料による吸収波長で検光(b)図3powderLock-inAmpSoft materialLock-inAmpDRCDTransmittanceCDUCS-2/3の(a)ブロックダイアグラム.(b)装置概観と透過CDとDRCDに対する入射光の進行方向.((a)Block diagram and(b)outlook with light pathfor transmittance CD and DRCD for UCS-2/3.)194日本結晶学会誌第60巻第4号(2018)