ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No4

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概要

日本結晶学会誌Vol60No4

電子線ホログラフィーにおける位相シフト法η( xy , ) = tano??????M∑? 1 m=1M∑m=1? 2πm ? ?I( x, ym , )sin?M? ?? ? ?? 2πm ? ?I( x, ym , )cos?? M?????M? 2πm ???M? 2πm ??φo( xy , ) = ?∑I( x, ym , )cos ?I( x, ym , )sinm? M?? + ?∑?? = 1??? M??? m=1??22(13)(14)以上に述べたプロセスでは,規則正しく位相変化を与えた複数枚のホログラムが取得できれば,位相分布像,振幅分布像の双方は干渉縞間隔によらない空間分解能で得ることが可能である.しかしながら,実際の実験においては,正確に等間隔でm段階に干渉縞の位置を変化させるのは難しい.そこで,与えられた各ホログラムから各々の位相の変位量を求め,その値を基に位相変化に規則性を必要としない手法が考案されている.13),23),24)3.2初期位相の計測まず,各ホログラムからの初期位相の計測法について述べる.式(12)で与えられているm番目のホログラムのフーリエ変換を行うと式(15)を得る.ただし,y軸方向への縞の傾斜成分も考慮し,前節までの取り扱いよりも一般化している.*H x y x y x 0x y 0y x 0x y 0 yFI [ ]( R , R ) = AR ( , R ) + B( R ?R , R ? R ) +Β( R + R , R + R )(15)AR (x, Ry) = F?2|φo ( xy , )| + 1?( Rx, Ry)??BR (x, Ry) = exp ? ? iφ( m) ? ? F?iηφo( xye o ( xy , ), ) ?( Rx ? Rx, Ry Ry)??0?0*Β( Rx, Ry) = exp ?? ?iφ( m)? ? F ??iηφo xyo( xye , ) ( , ) ?( Rx + Rx, Ry + Ry)??0 0(16)ここで(Rx,Ry)は逆空間(周波数空間)での座標軸であり,B項とB *項に含まれるexp[±iφ(m)]は初期位相である.初期位相の項は式(16)で与えられたサイドバンドにすべて含まれている.したがって,サイドバンドの任意の周波数成分における位相を求めればそのホログラムの初期位相量がわかる.ただし,位相シフト法に用いる全ホログラムについて同じ空間周波数における初期位相を用いなければならない.そのため,サイドバンドのピーク周波数(すなわち搬送周波数)(R 0x,R 0y)での初期位相を求めるのが合理的である.演算処理の概要を図7に示す.図7aは異なる初期位相をもつ一連のホログラムをフーリエ変換し,そのサイドバンドのピーク周波数での実数部の寄与をR,虚数部の寄与をIとして複素平面上にプロットしたものである.このとき,縞の初期位相量に合わせて,実数部と虚数部の寄与が環状に分布する.詳細は省略するが,この環状分布の中心座標(R 0,I0)がセンターバンド(式(16)のA(R x, R y)項)からの寄与を表している.そして,この中心座標(R0,I0)からの方位角が各ホログラムの縞の初期位相である.24)このように精度よく初期位相を計測し,高精度に位相シフト法を実施することが可能である.3.3初期位相に規則性がない場合の位相シフト法による再生法さて,前節の方法に基づき,初期位相量に規則性がない場合の位相シフト法による再生法を説明する.式(12)を改めて以下のように書き直す.*IH ( x, ym , ) = axy ( , ) + c( xy , )exp ? ? iφ( m) ? ? + c ( x, y)exp ?? ?iφ( m)? ?(17)図7初期位相の計測方法の概要.(Relationship among initial phase data from holograms.)(a)複素平面上での干渉縞のシフトの様子,(b)各ホログラムの初期位相項日本結晶学会誌第60巻第4号(2018)173