ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol60No2-3

クリスタリットオートタキシンAutotaxinオートタキシン(別名ATX,ENPP2)は血漿中に存在するリゾホスホリパーゼDに属する脂質分解酵素で,血中に存在するリゾホスファチジルコリンを加水分解して,リゾホスファチジン酸を産生する.リゾホスファチジン酸は,リゾホスファチジン酸受容体を介してさまざまな生理応答を引き起こす.オートタキシンによるリゾホスファチジン酸の産生は止血やリンパ球の遊走などのさまざまな生理機能に関与し,また脳や血管の発生にも必須である.オートタキシンの発現亢進は乳がんやグリオブラストーマのような悪性腫瘍の形成,神経障害性疼痛や糖尿病といった疾患にも関与することが知られている.(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻濡木理)アプタマーAptamerアプタマーは核酸のもつ“造形力”を利用して標的分子に高い親和性および特異性で結合する分子である.核酸アプタマーはランダムな配列のオリゴヌクレオチドから構成されるライブラリーからSELEX法によりスクリーニングすることができる.核酸アプタマーは多様な標的分子と結合できる性質にくわえ,免疫原性が低い,溶解度が高い,化学修飾が容易であるといった性質をもつことから医薬品への応用が進められており,実際に抗VEGFアプタマーであるPegaptanib(商品名Macugen)は加齢黄斑変性の治療剤として承認されている.(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻濡木理)突発性肺線維症Idiopathic Pulmonary Fibrosis突発性肺線維症は,肺組織の線維化によって,呼吸器系に支障をきたす重篤な疾患である.原因不明でいまだ有効な治療法も確立されていないが,ATX(autotaxin)によって産生されたリゾフォスファチジン酸が肺線維芽細胞上のLPA(lysophosphatidic acid)受容体を活性化することで線維化が起こると考えられている.(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻濡木理)日本結晶学会誌第60巻第2・3号(2018)149