ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol60No2-3

千田美紀,安達成彦,千田俊哉,Maharani Pertiwi Koentjoro,小川直人点から図7b,7cの選択的な相互作用(selective)に着目すると,CbnR_DBDのThr33,Arg34,Pro30とcbnA RBSとの相互作用,BenM_DBDのAla28,Gln29,Pro30,Pro31,Arg34,Arg58とbenA RBSとの相互作用に注目すべきであることがわかる.さらに,DNAとの相互作用に使われており,なおかつCbnRとBenMでアミノ酸配列が異なる残基に注目すると,CbnRのThr33が浮かび上がってきた(図7d).その部分に注目して構造を見てみよう.CbnRのThr33の側鎖は6番目のチミンとファンデルワールス相互作用していた(図8a).それに対して,BenMのSer33は直接DNAとは相互せず,Gln29を介して6番目のアデニンと相互作用していた(図8b).この構造解析の結果に基づいて,CbnRのThr33をAlaやSerに変異させた変異体を作製し,ゲルシフトアッセイを行った結果,Thr33Ala変異体ではDNAとの相互作用が生じないこと,Thr33Ser変異体ではDNAとの相互作用が弱くなっていることが確認できた.また,CbnRが,cbnAプロモーターのRBS配列をbenAのものに置き換えたキメラなDNAとはまったく相互作用しないことも確認できている.14)5.まとめCbnR_DBD?cbnA RBS複合体とBenM_DBD?benARBS複合体の構造を詳細に比較した結果,全体構造は類似していたもののCbnRのThr33とBenMのSer33というアミノ酸残基のわずかな違いが,近くのアミノ酸残基Gln29のコンフォメーションに違いを生じさせ,プロモーター配列の認識の選択性を生み出していることが明らかになった(図8c,d).今回の解析から,ゲルシフトアッセイやレポーターアッセイといった生化学実験だけでは説明が難しかった部分を結晶構造から説明することができた.この結果は,すでに類似した構造が解明されている場合であっても,結晶構造を決定することに意味がある1つの例と言えるであろう.図8CbnR_DBD?cbnA RBS複合体とBenM_DBD?benA RBS複合体の相互作用のまとめ.(Summary of Protein-nucleotideinteractions for CbnR_DBD?cbnA RBS complex and BenM_DBD?benA RBS complex.)(a)Thr33周辺のCbnR_DBDとcbnA RBSとの相互作用.(b)Ser33周辺のBenM_DBDとbenA RBSとの相互作用.(c)CbnR_DBDとcbnA RBSとの相互作用の模式図.(d)BenM_DBDとbenA RBSとの相互作用の模式図(Koentjoro et al.,2018 14)を基に改変).140日本結晶学会誌第60巻第2・3号(2018)